毎週末、豪華な作家陣によるトークイベントも! “こどもと本が出会う場所”を夏休みの遊び場に

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/12

 7月15日から、ポプラ社による企画展「こどもと本が出会う場所」が、神保町のブックハウスギャラリーで開催されている。創業70周年のあゆみを記した年表と共に、自社が発行する絵本や児童書を展示。こどもたちが、遊びながら本に親しむことができる体験コーナーも用意されている。

■こどもたちが本を完成させる“体験型”展示

 夏休み期間中無休で開催されるこの企画展は、こどもたちの遊び場として活用できそうだ。本のキャラクターに色を塗ったり、紙を貼ったり、キャラクターと同じ衣装を着たりすることで、“読む”こととはまた違う、本の楽しみ方ができる。遊びながら本の楽しさに目覚めるかもしれないし、いつも親しんでいる本の新たな魅力を発見するかもしれない。いずれにせよ、こどもたちにとって貴重な体験となるはずだ。

「ティラノサウルス」(宮西達也:著)シリーズでは、好きな恐竜たちに塗り絵ができる

特大パネルできせかえを楽しむ「ルナとレナのきせかえコレクション」

キャラクターと同じ衣装を着て、表紙のパネル前に立てば、絵本の主人公に!

■歴史や図鑑の展示は夏休みの研究にも

 武将たちの歴史をコミックで紹介する「コミック版 日本の歴史」や、生き物たちの暮らしを教えてくれる「ふしぎいっぱい写真絵本」「ポプラディア大図鑑WONDA」のコーナーでは、書籍の中面を大きく展示。そのきれいな写真や、興味深い物語に、ほかのページも読んでみたい衝動に駆られる。こどもたちの好奇心がくすぐられ、学習への興味が生まれるきっかけにもなりそうだ。

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「コミック版日本の歴史」シリーズの展示。「イエス/ノー 武将占い」もできる!

小さなこどもは絵本コーナーへ。親子で絵本を楽しむための“のびのび読み3か条”も紹介

 同じタイトルを親子で読み継いでいくことも、本の楽しみ方のひとつ。自分が読んでいた本を覚えていなくても、その表紙やタイトルを見て思い出すことがある。ポプラ社の70年のあゆみが綴られた年表では、これまでに出版されたヒット作などが一目瞭然! なつかしい一冊に再び出会えるかもしれない。

見ているだけでワクワクする、ポプラ社の年表

■「おばけのアッチ」シリーズの角野栄子さんがトーク

会場には“小さな読者”もたくさん集まった

 もうひとつの目玉は、毎週末に行なわれるスペシャルイベント。7月15日のゲスト・角野栄子さんは、82歳になった今でも本を書き続け、今年3月発売の『角野栄子の毎日 いろいろ』(KADOKAWA)で自身の生き方にも注目されている。トークでは、2019年で40年を迎えるロングセラー「小さなおばけ」シリーズについて話してくれた。

 角野さんのデビューは、作家としては遅いほうだ。『ルイジンニョ少年 ブラジルをたずねて』でデビューしたのは、34歳のとき。同じポプラ社で「小さなおばけ」シリーズを書き始めたのは、40歳を過ぎた頃。最初からこどもの本を書こうとしていたわけでなく、大学の恩師に勧められてデビュー作を書き、その流れでこどもの本を書いてきた角野さんだけど、それは天職だった。「書くことがとことん好き。だから、やめられないの」とうれしそうに話す。

 「スパゲッティがたべたいよう」から始まったこのシリーズには、必ず料理が出てくる。「食べられないものは書かない」のが、こだわりだ。おいしい料理ととびきり楽しい物語に夢中になって、こどもたちはたくさん笑ってくれたそうだ。

 角野さんが自作について思うのは、「ためになるものではないけど、喜ばしいもの」。シリーズを書き始めた頃は、幼少時にお父さんが作ったり読んだりしてくれたお話を思い出していたそうだ。5歳で母親を亡くし、泣き虫だった角野さんは、「物語の中に入れば楽しい」ことを知っていた。このときの思いが忘れられないから、本を書くときはいつもワクワクするそうだ。たとえすぐに役に立つとは思えなくても「すくなくとも、私の人生は変わった。お父さんのお話は、なぐさめになったから」と話す。

 自身も娘を持つ立場から、「大人も本を読むことが大事」と、親に向けたアドバイスもあった。「芝居でもいいから読む。こどもが『お母さん、お料理も作らずに本読んでる!』と思ったら、何を読んでいるのか知りたがるわよ」とユーモアたっぷりに語り、笑いを呼んでいた。実際に、この「小さなおばけ」シリーズは親から子へと読み継がれている。「だから、とっても幸せな本」と、手に持った本を大切そうに抱えた角野さん。トークの後の読み聞かせでは、時々アッチコッチよそ見していたこどもたちも、夢中になってその声を聴いていた。

 スペシャルイベントでは他にも、絵本『ごめんなさい』の刊行を記念したサトシンさんと羽尻利門さんの絵本ライブや、「コミック版 日本の歴史シリーズ」の監修をした加来耕三さんによるこども向けクイズ大会など、多岐にわたった内容が予定されている。

角野栄子さんのサイン本。サトシンさんや加来耕三さんのイベントではサイン会も

取材・文=吉田有希

ポプラ社×ブックハウスカフェ「こどもと本が出会う場所」
開催:8月31日(木)まで。11:00~17:00、期間中無休
会場:神保町・ブックハウスギャラリー(東京都千代田区神田神保町2-5 北沢ビル2階)
料金:無料
主催:ポプラ社
https://www.poplar.co.jp/company/meetthebooks/