今の会社で定年まで勤めるか? 新たな道を選ぶのか? 「仕事人生のリセットボタン」の見つけ方

ビジネス

2017/8/7

『仕事人生のリセットボタン: 転機のレッスン』(為末大、中原淳:著/筑摩書房)

 現役でいられる期間が限られており、若くして引退後の人生設計を行わなくてはならないスポーツ選手。現役時代からビジネスを始める人や、引退後に華麗な転身をする人もいる。いずれにしても、転機を見極めることが大切だ。

 そしてこれは、スポーツ選手に限ったことではない。終身雇用制度が破綻し、就職しても定年まで同じ会社に勤められる保証のない状況で、ビジネスパーソンもこれまで以上に様々な決断を求められている。その一方で、多様な働き方が可能になり、選択肢が増えていることも事実。しかし、チャンスをつかめるかどうかは、自分の決断次第だ。

 『仕事人生のリセットボタン: 転機のレッスン』(為末大、中原淳:著/筑摩書房)では、現代のビジネスパーソンにとって大切なのは、自らを「リセット」することだと指摘されている。対談形式の本書では、人材開発を専門とする研究者で、「働くビジネスパーソンの成長」を研究する中原淳氏がナビゲーターとなり、元世界陸上銅メダリストの為末大氏の競技人生などのこれまでのキャリアを振り返りながら、どのような選択を行ってきたのかを分析。そこから「リセットボタン」とうまく付き合う方法を考えていく。

■自分(個人)と会社(組織)の関係

 対談を始めるにあたり、簡単なエクササイズが行われているので、ご紹介しよう。人事・人材開発の領域ではよく知られているそうなので、ご存じの方もいるかもしれない。自分(個人)と自分が働いている会社(組織)を2つの「○」だとして、この関係を紙に書くというものだ。紙とペンがあればできるので、試してみてはいかがだろうか? それぞれの円の大きさや位置関係で、働く個人が「自分」と「自分が所属する組織」の関係をどう見ているかが分かる。中原氏によれば、簡単なエクササイズだが、普段あまり考えないことが浮かび上がるそう。詳しい解説は、ぜひ本書でご確認を。

■リセットのためのヒント

・いまの時代状況をしっかりと認識する
・努力ではなく、成果を大切にする
・自分の頭の上に「もうひとり」の自分をつくる

 上記のエクササイズを行っていくと、「個人」と「組織」の関係が変わってきていることが分かるそうだ。著者によれば、終身雇用制度が成り立っていた頃には、仕事人生は「右肩上がりの単線エスカレータ」だった。いい会社に入ればいい生活、いい老後が待っていたのだ。しかし、現在では、単線ではないし右肩上がりとも限らない。この状況を、きちんと把握することが大切だ。

 為末氏によれば、日本のスポーツ界では、トレーニングの成果を、トレーニング中に感じた痛みと費やした時間量で測る傾向があるそう。そして、この「努力信仰」があると、限界が設定できず、戦略も立てられない状態になってしまう。しかしこれは、スポーツ界に限ったことではない。このメンタリティは、日本の企業・組織にも色濃く残っており、長時間労働の問題にも影響していると、中原氏は指摘する。「仕事にかけた時間=残業時間」で忠誠心や仕事熱心さが評価されてしまい、長時間労働につながってしまうのだ。

 リセットする際に、もうひとつ大切なのは、自分で自分をモニタリングすること。「自分のことをモニタリングして、自分をコントロールできる、もうひとりの自分」を自分の上に用意して、折に触れて振り返ることが大切だ。著者のお二人も、この「もうひとりの自分」を持っているそう。人間には、「ホメオスタシス(恒常性)」というものがあり、変化を避けようとする特性があるため、「もうひとりの自分」で常に自分を客観的にモニタリングし、必要な時に変化を起こすというわけだ。

 ここでは、主に第一章で述べられている内容を抜粋してご紹介したが、本書には他にも様々なヒントが掲載されている。リセットボタンをうまく押すために「自分年表」の作成が推奨されており、為末氏の自分年表も収録されているので、それを参考にしてご自身の自分年表を作ってみてはいかがだろうか? そこから、「リセット」のヒントが見えてくるかもしれない。

文=松澤友子