文芸・カルチャー

岡田准一&堤真一W主演で映画化された「ザ・ゾンビーズ」シリーズ第1弾! 女子高襲撃を計画する“革命的おバカ”たちの行方は?

単行本(2001年刊行)
文庫版(2008年刊行)

 「俺は納得いかないものを変えちゃいたいんだよ」

 学歴、就職、民族、セクシャリティ……。2010年代も後半になるというのに相変わらず格差や差別を助長するような発言はなくならないし、それどころか問題はますます根深くなるばかり。勝ち組や負け組なんて言葉もいまだメディアから消える様子はない。「あちら」と「こちら」を線引きし、「こちら」の中でも上と下を規定する。なんとも愚かしいことだと思いつつも、どこか目を逸らしがちになるのは自分には関係ないと思っているせいなのかもしれない。決してその線引きや規定に納得するつもりも、加担するつもりもないが、「そういうものだ」と諦めてはいないだろうか?

 金城一紀の『レヴォリューションNo.3』は、そんな不条理な枠組みに押し込まれた男子高校生たちが、自由を求めて面白おかしく抗っていく連作短編集だ。ザ・ゾンビーズ・シリーズの第一弾として知られ、第二弾となる『フライ,ダディ,フライ』は05年に岡田准一と堤真一のW主演で映画化もされた。

 本書に登場するのはオチコボレ高校に通う少年たちだ。中学校まで民族学校に通っていた舜臣(スンシン)、フィリピン人の血が流れるアギー、難病を抱えるヒロシに、優等生だったにもかかわらず中学で不良になった「僕」と、彼らは好むと好まざるとにかかわらず落伍者のレッテルを貼られている。無為な日々を送る彼らを変えたのは、生物教師ドクター・モローが放った「世界を変えてみたくはないか?」というひと言だった。

 世界を、社会を、変えるためには努力するしかない。ドクター・モローの言葉に触発された彼らは、ザ・ゾンビーズという48人からなるグループを結成し、彼らなりの革命を起こそうとする。その革命とは、名門女子高の学園祭に潜入してナンパすること。……なんとも頭の悪い革命である。その内容も出前とともに潜入する「出前作戦」、ええじゃないかと踊りながら突っ込んでいく「ええじゃないか作戦」といった、アホみたいにずさんな計画ばかり。当然、恥ずかしい失敗の連続だったが、彼らはめげずに襲撃を試みてきた。そして、いよいよ高校最後の襲撃。この年は、動員された体育会連中を突破しなければならなかった。

 生まれながらにしてのお嬢様と将来が約束された体育会連中、そして対抗するオチコボレな「僕」ら。その構図は確かに現代社会の縮図ようにも見えるが、しかし決してそこを重々しく描き、声高に強調する作品ではない。喧嘩っぱやくて、楽しいことが大好き、くだらないことにも全力なザ・ゾンビーズの、ひたすらに型破りでバカバカしい戦いが描かれていく。世界を変えられる、なんでもできると信じる若い彼らの真っ直ぐな思いは、きっと爽快な読後感を与えてくれるはずだ。

 本書には女子高襲撃を描いた表題作のほか、カツアゲされた仲間の復讐を遂げようとする「ラン、ボーイズ、ラン」、知人女性のストーカーを追い詰めていく「異教徒たちの踊り」の三編が収録されている。どの作品にも徹底しているのが、「納得できないなら、戦う」の精神だ。15年以上前に刊行された作品だが、その輝きは今なお増していくばかり。自分に、社会に、悶々とした思いを抱いている人ならばきっと突き刺さるものがあるはず。まだまだ諦めてはいられない、そう思わせてくれるパワーがある。

文=岩倉大輔

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