コミケ帰りのヲタクが戦国時代にタイムスリップ!? 『戦国コミケ』が“コミケあるある”すぎて面白い

マンガ

公開日:2017/8/10

『戦国コミケ』(横山了一/KADOKAWA)

 もうすぐ始まる夏コミ。コミケ参加予定のヲタクにとっては、カタログでのサークルチェック、まわる順番の念入りな計画、ホテルの手配、もしくは確認、新幹線や飛行機の確認、戦地で生きるための暑さ対策、千円札と小銭の準備など、入念に最終チェックをしている段階だろう。数あるイベントの中でも過酷を極める「夏コミ」は、情報収集や事前準備が勝敗を決める。そのため、参加を重ねるごとに多くのスキルを取得する。

 8月10日に電子書籍が配信された『戦国コミケ』(横山了一/KADOKAWA)は、そんなコミケのために生き、コミケのために死ぬ真のヲタク・今野タケシが戦国時代にタイムスリップし、コミケスキルを活かして戦っていく物語だ。

 主人公のタケシは、コミケ参戦中に落ちた雷によって戦国時代に飛ばされてしまう。そこは、戦いの真っ只中。千を超える兵の合間をするするとすり抜けて、矢を防いでいくタケシに、現地の兵士は驚愕。「何者だおぬし」と問われた彼は、「小生は20万人が集まる戦場をくぐり抜けてきましたから…!」と一言。ここから、彼の戦国生活は始まる――。

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 タケシはコミケスキルを買われ、木下藤吉郎の配下に迎えられる。そこで兵士の一員として戦いに参加していくのだが、ここで使われるスキルがことごとく“コミケあるある”なのだ。例えば、敵である朝倉軍の大将の居場所を聞かれれば、サークルを探す時の鋭く常軌を逸した集中力、観察力で瞬時に見抜き、抱き枕カバーで捕縛。友人に頼まれた戦利品のBL本で織田信長とも打ち解け、コミケスタッフ経験で得た隊列整理のスキルで、戦地で混乱する兵を整列させていく。他にも、ヲタ芸やサークル参加時のブース設営スキルなど、ヲタクとして培ってきたスキルがことごとく評価され、受け入れられていく。

 本作の舞台は戦国時代だが、これらのスキルは、意外とこの現代でも役に立つ。イベントやお祭りの混雑に怯むこともないし、スタッフ含めその場にいる全員が“参加者”であるという認識は、仲間意識の基本だろう。また、無駄なく行動するための下準備や確認、段取りに至っては、ここまで鍛えられる状況もなかなかない。
 非ヲタに「なんでこいつ普段地味なのにこんなスキル持っているんだ……」と思われる裏には、こういったヲタ活にかける熱い情熱と執念によって日々戦術が磨き上げられているという、知られざる秘密があるのだ。

 この『戦国コミケ』を読めば、コミケ参加者は「あるあるwww」、非ヲタや未参加者は「コミケってすごい……」と思わず引き込まれること間違いなし。今年の夏コミも、本書でコミケの過酷さを再認識し、暑さ対策や事前準備をしっかりとして挑もう。なお、これといった目的のない参加予定者には、昼以降の参加をオススメする。

文=月乃雫