生活習慣病の代表格・糖尿病とアルツハイマー病の関係とは?

健康・美容

2017/8/14

『アルツハイマー病は「脳の糖尿病」(ブルーバックス)』(鬼頭昭三、新郷明子/講談社)

 後天的な脳の障がいにより、いったん正常に発達した知能が低下する状態となる認知症。本来、いくつかの病気を包括した名称であるが、その多くを占めるのが、記憶障がいや判断力の低下などを伴う「アルツハイマー病」だといわれる。

 そして近年、生活習慣病の代表格である糖尿病とアルツハイマー病に関係がみられるようになってきたと主張するのは、『アルツハイマー病は「脳の糖尿病」(ブルーバックス)』(鬼頭昭三、新郷明子/講談社)だ。

◎糖尿病患者はアルツハイマー病を患うリスクが2倍になる統計も

 本書によれば、糖尿病とアルツハイマー病は「生活習慣病の範疇」に含まれるという。生活習慣病としては、他にも高血圧症や脳梗塞、がんなどが挙げられるが、いずれにせよ引き金となるのは日常生活のストレスや喫煙、食物中の変異原物質など。これらにより遺伝子のDNAが損傷を受け、細胞が老化することで発症するという見方がある。

 そして、糖尿病の中でも日本人患者のうち95%が該当するといわれるインスリン作用の不足を主な要因とした2型糖尿病(以下、本稿では糖尿病と明記する)と、アルツハイマー病が並行して増えているというのが本書の指摘だ。

 少し時代をさかのぼるが、ある地域で1988年から15年間にかけて60歳以上の男女1017名を対象に統計を取ったところ、予備軍を含む糖尿病患者のうち、アルツハイマー病を患うリスクが非糖尿病患者と比べて2倍になったと報告されたという。

◎糖尿病とアルツハイマーの共通点は“インスリン”

 糖尿病とアルツハイマー病の共通点とは何か。本書ではその理由として、糖尿病の原因を作り出す体内の部位・すい臓と、アルツハイマー病に関連する記憶を司る脳の部位・海馬の関係を取り上げている。

 そもそも糖尿病とは、すい臓の中に散在するランゲルハンス島内のβ細胞から生み出されるインスリンの作用が何らかの原因で低下し、ブドウ糖の代謝異常を起こし、血糖値が上昇することで起こる。

 一方、アルツハイマー病は海馬の損傷をきっかけに脳が徐々に萎縮していくことで、新しい記憶から失われていくのだという。そして、この起点となる海馬の中でも、すい臓と同じようにインスリンが生み出されており、さらには記憶を伝達する物質として作用しているというのが本書の見方だ。

 ところが、血中のインスリン濃度が何らかの原因で異常に高くなる「高インスリン血症」の状態になると、身体は血糖値を正常に保とうとして「インスリン抵抗性」を持ち始める。これにより脳の中でインスリンが行き渡りにくくなることで、記憶物質としての働きが難しくなりアルツハイマー病を発症しやすくなるのだという。

◎喫煙やアルコールは大敵! 食事療法「地中海式ダイエット」で対策を

 本書ではいくつかの予防策が取り上げられているが、その中でも比較的分かりやすいのは睡眠をしっかり取るということである。ある研究によれば、一晩の睡眠時間を4時間に制限した状態を5日間続けると「インスリンの作用が40%低下し、強いインスリン抵抗性の上昇がみられる」という結果もあったそうだ。

 また、生活習慣病の主な要因とされる喫煙も大敵で、タバコに含まれるニコチンは脳の中で記憶の促進に役立っている女性ホルモンの「エストロゲン」の作用を阻害してしまう。同じように過度な飲酒もできれば控えるのがよく、アルコールが分解されて生み出される「アセトアルデヒド」は毒物として、インスリン抵抗性などの上昇を引き起こしかねないのだという。

 さらに、糖尿病とアルツハイマー病の対策として、本書で紹介されているのが食事療法の一つである「地中海式ダイエット」だ。食事内容で気をつけるべきとされるのは、以下の3点である。

1)野菜、果物、穀物などの植物性の食品を豊富に摂る
2)脂肪源としてオリーブ油のような不飽和脂肪酸を摂るよう心がける
3)チーズやヨーグルトなどの低脂肪の乳製品を日常的に摂る

 いつまでも健康でありたいと願うのは、誰しも思うことだろう。病気になってからでは遅く、何ごとも日頃からの予防が肝心となるし本書もその足がかりとなる。そしてもし、自分の身体に異変を感じる場合には、所定の診療機関へ足を運ぶのも忘れないようにしていただきたい。

文=カネコシュウヘイ