30歳OLと12歳の少年。幸せな笑顔を見たいだけなのに、阻まれるその不確かな関係の行方は。話題のコミック『私の少年』

マンガ

更新日:2018/4/20

『私の少年』(高野ひと深/双葉社)

 孤独を満たしてくれるのが、恋愛とは限らない。同性にせよ異性にせよ、恋人でもないのに濃密に惹かれあい、必要としあう相手が人生の一時期に存在することはある。だがそれが、血縁でもない30歳OLと12歳の少年だったらどうだろう。互いに疚しいものがなくても、世間の目は――? そんな不確かであやうい2人の関係を、叙情的に繊細なタッチで描き出すのがマンガ『私の少年』(高野ひと深/双葉社)。

 「マンガ史上最も美しい第一話」と絶賛され、コミックスは累計55万部を突破。「このマンガがすごい!2017〈オトコ編〉」で2位を獲得するなど、いま大注目の同作最新3巻が発売された。

 主人公の聡子は、強くて凛々しい大人の女性だ。いつも理性的な彼女は、思わせぶりな態度をとり続けた末に、婚約者を紹介してきた元カレのことを、怒ることも憎むこともできなかった。そんなとき出会ったのが、深夜の公園でひとりサッカーの練習に励む少年・真修(ましゅう)。変質者に絡まれていた真修を助け、フットサル経験のある聡子が練習につきあうことを約束したところから2人の関係は始まっていく。

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 母親もなく、父は帰ってこない夜もあり、弟の面倒をひとりで見て、無意識に我慢を重ねている真修にとって、自分だけの相手をしてくれる聡子は、一筋の光だった。そして聡子にとってもまた、純粋にまっすぐ自分を慕ってくれる真修のまなざしは無味乾燥な生活をまぶしく照らすものだった。

 だが、友達と呼ぶには、2人は年齢が離れすぎている。教師でも親戚でも、共通の知人がいるわけでもない自分が真修に深入りすることが、世間からあらぬ誤解を受けかねないことは、聡子にだってわかっていた。それゆえ一度は距離をとろうとするが、サッカーのためじゃなく会いたかったから一緒にいたのだと思いをぶつけてきた真修に、決意が揺らいでしまう。3巻では、真修の家族と対峙することを決め、胸を張って一緒にいられるように大人としての筋を通そうとする……のだが。2人の関係は周囲に波紋をもたらし、聡子の立場もあやうくしていく。確かに、日に日に男らしくなっていく真修の心に芽生えているのは、ほのかな初恋かもしれない。聡子が真修といることで得ていた安らぎは、ただの母性ではないかもしれない。だが、それを恋と断じてしまうのはあまりに軽率な気がしてしまう。

 切実で、曖昧な2人の関係が今後どうなっていくのか。どんな結末を迎えるにせよ、それが2人にとって幸せで、救いのあるものであってほしい。そう願わずにはいられない作品なのである。

文=立花もも