なぜ空腹だと眠れない?「睡眠負債」にならないために…知っておきたい、睡眠のあれこれ

健康・美容

更新日:2020/5/8

『睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか』(講談社ブルーバックス

 人はなんのために眠るのか。休息であり、記憶の整理であり、夢を見るためかもしれない。では、あなたはなんのために「起きて」いるのか。なにかの活動をするためだろう。食事をする、働く、楽しむため…。この哲学的な問いにひとつの答えを示してくれた人物がいる。医学博士で筑波大学教授の櫻井武氏だ。櫻井氏は、睡眠医学の研究者で、1998年に「オレキシン」という神経伝達物質を発見した人物のひとり。このオレキシンを知ると、私たちがなぜ「起きる」のか、興味深い一面が見えてくる。櫻井氏の著書、『睡眠の科学・改訂新版 なぜ眠るのか なぜ目覚めるのか』(講談社ブルーバックス)よりその極意を紹介しよう。

■眠りと覚醒はシーソーの関係

 まずオレキシンとはなにか。オレキシンは、脳を「覚醒」へ導き、維持する物質である。少々ややこしい話になるが、眠りと覚醒の関係を表すなら、シーソーのようなものである。寝ているとき、起きているとき、脳内では活動する神経細胞が互いに牽制し合っている。

 人が寝ているとき活発になるのは、「GABA作動性ニューロン」。一方、覚醒している間は「モノアミン/コリン作動性ニューロン」が活動する。モノアミンとはノルアドレナリン、セロトニン、ヒスタミン、ドーパミンなどである。

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 下の図で「睡眠中枢」と表現されているのが、「GABA作動性ニューロン」。「覚醒中枢」が「モノアミン/コリン作動性ニューロン」である。


 人が起きているときは、覚醒中枢こと「モノアミン/コリン作動性ニューロン」が活性化。また寝ているときは、睡眠中枢こと「GABA作動性ニューロン」が働く。この2つの間を取り持っているのが、櫻井氏が発見したオレキシンである。オレキシンは、覚醒中枢に「起きろ」「眠るな」とサインを送る物質である。