独身40代が日本を滅ぼす!?…では世界有数の単身世帯国スウェーデンは破滅直前なのか

恋愛・結婚

2017/8/24


ノルウェーやドイツを押しのけ、世界一の単身世帯率を誇るスウェーデン。2012年の統計では10人に4人が一人暮らしで、全世帯数の44.6%が単身世帯です。先日、NHKの番組で「独身40代が日本を滅ぼす」と話題になりましたが、世界でも有数の単身世帯国スウェーデンは、破滅する一歩手前なのでしょうか。

専業主婦は「肩身が狭い…」

独身・単身世帯と聞くと、「寂しい中年男性」を思い浮かべる人も多いと思います。スウェーデンでもかつては、独身者というと「病気やアルコール中毒者」でしたが、現在そんな偏見はありません。むしろ、専業主婦の肩身は狭いです。結婚後、スウェーデンに移住した日本人女性が「専業主婦でいると周りのスウェーデン人にいろいろ言われ、つらい」と話すのを時々聞きます。自立していなければ「独身者より社会に貢献していない」とみなされるのでしょう。

独身者に割と多いのが、配偶者に先立たれた独居老人です。世界でも有数の長寿国であるスウェーデンに、二世帯同居の習慣はありません。一般的に長年連れ添った伴侶が亡くなると、皆福祉サービスを使って一人暮らしをします。

また、スウェーデンでは、結婚と独身は「対極」にありません。「Sambo(サンボ)」と呼ばれる同棲や事実婚の形で生活する家族も多く、再婚、ステップファミリーも珍しくありません。「半分兄弟」という言葉もあるほど、腹違いの兄弟を持つ人が多いです。加えて、ここ数年よく聞くのが「Sarbo(サーボ)」という恋人以上夫婦未満のようなパートナー関係。普段は一緒に暮らさず、週末など互いの都合が良いときに会います。比較的年齢を重ねた人が選ぶ、新しいライフスタイルです。

配偶者控除が廃止されたワケ

とはいえ、100年ほど前は大家族が一般的でした。ただ、永世中立国として戦争の影響をあまり受けなかったため、第二次世界大戦後の近代化・工業化の波にいち早く乗り、女性もどんどん社会進出しました。

女性の経済的自立をひときわ促したのが、1970年代に増えた就学前学校(幼稚園や保育園)。この時代を前後に専業主婦はいなくなり、配偶者控除の税制も廃止されました。誰もが個人の能力に応じた仕事で社会に貢献し、不足部分を社会と政府が補う。そんなスウェーデンの社会福祉の基礎が築かれたわけです。人は家庭で得ていた安心感を、社会と国から得るようになりました。

その結果、「生活するために誰かと一緒に暮らさなければならない」という価値観が消滅。一緒に暮らすメリットがないと感じたカップルや夫婦は、同棲を解消したり離婚したりするようになりました。たとえ子どもがいても、経済的に自立していれば、魅力のないパートナーと一緒に暮らす意味はないということでしょう。互いを個人として尊重しあうがゆえに、共に暮らす喜びを見出せないなら、一人で暮らすほうが楽だと感じるのでしょう。


それでも忍び寄る「自殺・うつ病、孤独死」の影

1990年代に入ると、『ブリジット・ジョーンズの日記』『フレンズ』といったアメリカドラマの影響もあり、独身は強さと自立の象徴とみなされるようになります。ただ、スウェーデンでも独身はなにかとお金がかかります。都市部は住宅不足。単身用の住まいを見つけるのは簡単ではありません。それでもしたいシングルライフ。インターネットを使えば、自宅に居ながらデート相手を見つけられるし、SNSで適度に他人とつながっていれば、それほど孤独を感じることもありません。他人に干渉されたり、人に合わせたりといった人付き合いのわずらわしさを逃れ、自己実現のためだけに時間を使えるのは、かけがえのない「豊かさ」なのかもしれません。

現代のスウェーデンには多様な生き方と、それを受け止める寛容さがあります。独身者への偏見も、「結婚してこそ一人前」という価値観もありません。シングルマザーも、ゲイやレズビアンもめずらしくないです。

だからこそ、うつ病や自殺、孤独死は大きな社会問題となっています。シングルライフを選ぶスウェーデン人の生き方として今後増えるのが「コレクティブハウス」(編注:親しい人や仲間と共同生活すること)との見方もあります。健康に長生きをするため、彼ら彼女らも今後は、何らかの形で人とのつながりを模索していくのだろうと思います。

文=citrus サリネンれい子