電子書籍はどこまで伸びる?――マンガが牽引するその市場

ビジネス

2017/9/6

 スマホ・タブレットの普及によって、電子書籍の利用が世界的に拡がっています。ただ、日本の市場はちょっと特殊です。マンガの存在感が圧倒的なのです。「マンガやアニメは子どものもの」という国が多い中、老若男女マンガ好きの日本。電子書籍の普及を拡げる立役者となっています。

 そんな日本の電子書籍市場の様子が改めて浮き彫りになったのが、(株)インプレスが毎年発行している「電子書籍ビジネス調査報告書」。その2017年版で、コミックが電子書籍市場の8割を占めていることが示されたのです。(文芸・実用書などの「文字もの」が359億円に対し、コミックが1617億円)

出典:「インプレス総合研究所『電子書籍ビジネス調査報告書2017』」

「ケータイコミック」によって携帯電話でマンガを読むこと、またそれに対しておカネを払うことに抵抗感があまりないことに加え、マンガは続きがあるとついつい読みたくなるコンテンツです。週刊や月刊のマンガ誌での連載から作品が生まれていることもその要因となっているはずですが、昨年8月にはじまった読み放題サービス「Kindle Unlimited」でも想定以上にマンガが読まれたため、一部の出版社の作品が削除されるなどの混乱があったことも記憶に新しいところです。

 読み放題サービスをすでに利用している人は17.5%とまだ少数派ですが、利用したい(5.3%)・興味はある(35.2%)をあわせると、半数以上の人が読み放題サービスに関心を示していることも分かりました。音楽・映像の分野で月額定額での聴き放題・見放題サービスが拡がる中、電子書籍も読み放題で、というニーズが高まっていることがうかがえます。


 ここまでの数字は、都度購入・読み放題をあわせた有料での電子書籍についてのものです。これはスマホ・タブレットを利用しているユーザーの17.6%にあたりますが、それを上回る22.8%の人が「無料のみ」電子書籍を利用していると答えています。


 マンガの分野では、comicoやLINEマンガなど基本無料で読めるマンガアプリが人気を博しています。


 これらのアプリは広告を表示することで、運営されていますが、調査では、こういった無料マンガアプリの広告市場の推移についても2014年から統計をとっています。こちらも急速に拡大しているのです。


どこまで電子書籍は伸びるのか?

 このようにマンガが牽引する日本の電子書籍市場。インプレスの調査報告書では、この市場が今後どのくらい拡大するかも予測されています。


 東京オリンピックの翌年、2021年度には、現在よりも1300億円以上拡大した、3560億円という予想となっています。やはり読み放題サービスの利用が拡大している電子雑誌もここでは伸びを見せています。

 別の調査(出版科学研究所調べ)となりますが、16年の印刷出版物の販売金額は1兆4709億円(前年比3.4%減)となっています。こちらは12年連続で前年実績を下回っており、世の中の「出版不況」という印象をつくることになっています。しかし、電子書籍市場の伸びを見ると、マンガも含めた読書そのもののニーズは衰えていないことがわかるのではないでしょうか? 印刷出版物に対する電子書籍の割合はまだまだ小さく、今後さらに伸び代があると捉えることもできると思います。

 生活の一部として浸透する電子書籍。目新しさは薄れましたが、これからも私たちと本やマンガとの関わり方を着実に変えていくことになるでしょう。

文=まつもとあつし