「理」を制するものは「料理」を制す! ラクラク実践の「理系」レシピで料理上手に【作ってみた】

食・料理

公開日:2017/9/19

『なるほど! カンタン! 理系ごはん』(高世えり子/芳文社)

 学生時代、化学式などを学んだときに「これがいつ何の役に立つのだろう?」とか疑問に思ったことはないだろうか。私も学校を卒業してから随分と経つが、ハッキリ「役立った」と感じたことはない。しかし現実問題として、日常で化学などの「理系」知識は意識しないところで活躍しているのだ。その分かりやすい一例が「料理」である。食材を煮たり焼いたり、料理のすべては「理」に則っている。つまり料理を美味しく作るには、化学反応などの「理屈」を知っておいて損はないということだ。『なるほど! カンタン! 理系ごはん』(高世えり子/芳文社)では、うまく作れない料理を「理系」の知識によって簡単かつ美味しく作る方法を紹介している。

 例えば肉には「イノシン酸」という物質が含まれており、これは代表的な「うま味」成分として知られている。そして昆布などに含まれる「グルタミン酸」も「うま味」成分の代表格だが、これらが合わさるとどうなるか。なんと「うま味」が6~8倍になるというのだ。つまり食材にどのような「うま味」成分が含まれているかを知っておけば、それを組み合わせることでもっと料理を美味しく作れることになる。早速、本書のレシピを頼りに実践してみることにした。

【肉じゃが】

 まず使う道具は鍋ではなく「フライパン」。そして材料は「豚バラ薄切り肉100g」「じゃがいも2個」「にんじん1/2本」「玉ねぎ1個」「トマト1個」「しょうゆ大さじ1と1/2」「みりん大さじ3」「カレー粉大さじ1/2」「水200ml」である。

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 特に驚かれるのが「トマト」と「カレー粉」だろう。もちろん理由はある。トマトには「グルタミン酸」が含まれており、豚肉の「イノシン酸」と合わさることで「うま味」が増幅されるのだ。カレー粉は「香りによる満足感」をプラスする役割だという。

作りかたは

1.じゃがいもを4等分、にんじんは乱切り、玉ねぎを8等分、トマトを6等分のくし切り
2.フライパンにトマト以外の野菜を入れて全体に広げ、その上に肉を広げて並べる
3.カレー粉をふり、しょうゆ、みりん、水100mlを注いで火にかける
4.沸騰したら中火にして、落とし蓋をして15分煮る
5.トマトと水100mlを加えてさらに10分煮る
6.火からおろして3~10時間冷ます

 以上である。

 この工程で重要なのが「冷ます」こと。加熱することで食材の細胞膜が破壊され、食材の持つ「うま味」が外に出て混じりあう。それを冷ますことで、外に出た「うま味」が再び細胞の中に入り込んで全体に行きわたるのだ。この方法で作った肉じゃがは、確かにしっかりと「味」が決まっていた。ただこの工程で作ると野菜にやや固さが残るので、柔らかめが好みの人は野菜を小さく切ったり、煮る時間を長めに取ったりするなど調整するといいだろう。

 肉じゃがでは「グルタミン酸」など理系っぽい解説が並び、なんとなく拒否反応が出る向きがあったかもしれない。もっと直感的に分かりそうなものはないのかといえば、実はある。それは例えば「スイカに塩をふるとより甘く感じる」というもの。これは「味の対比効果」という現象で、体感として分かりやすいはず。それを利用したレシピを実践してみた。

【パリパリチーズのバナナ焼き】

 材料は4人分で「バナナ2本」「バター8~10g」「溶けるチーズ(細切りタイプ)70g」「メープルシロップ適量」。

作りかたは

1.バナナは半分に切り、縦半分に切る
2.バターを熱し、バナナを軽く炒めて放射状に並べる
3.2にチーズを散らし、ふたをせずにチーズの周りがカリカリになるまで焼く
4.ぬれ布巾でフライパンの底を冷やし、フライ返しで底のチーズをはがして皿に返してのせる
5.メープルシロップをかける

以上である。

 このままだとセンターに大きな穴ができるため、本には「アイスとかシナモンとかのっけたら」とあったのでアイスをのせてみた。チーズの塩味がバナナの甘さを絶妙に引き立て、非常に美味。メープルシロップとアイスでデザート感も増量する。

 理系レシピのよいところは、割と手軽に実践できること。ちゃんとした仕組みを知っていれば、間違った方向へ行くことも極力回避できるし、手間のわりに味も決まる。「理」を制することが、料理上達の近道なのかもしれない。

文=木谷誠