規格外の面白さ、ここにあり!「第8回 山田風太郎賞」は池上永一の『ヒストリア』に決定

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/11

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 「第8回 山田風太郎賞」の選考会が2017年10月23日(月)に行われ、池上永一の『ヒストリア』が受賞作に決定したことがわかった。

 「山田風太郎賞」は、戦後日本を代表する大衆小説家、故・山田風太郎の独創的な作品群と、大衆性、ノンジャンル性、反骨精神など同氏が貫いた作家的姿勢への敬意を礎に、有望な作家の作品を発掘顕彰するために創設された賞。毎年9月1日から翌年8月31日までに単行本として発表された、長編および短編の文芸作品の中から“最も面白い”と思われる作品に贈られる(新人、新進、中堅作家の作品が対象)。

 第8回目となる今回、木下昌輝の『敵の名は、宮本武蔵』、澤田瞳子の『腐れ梅』、森見登美彦の『夜行』、柚月裕子の『盤上の向日葵』といった候補作を抑え、見事『ヒストリア』が受賞作に輝いた。

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<『ヒストリア』作品内容>
第二次世界大戦の米軍の沖縄上陸作戦で家族すべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉。一時の成功を収めるも米軍のお尋ね者となり、ボリビアへと逃亡するが、そこも楽園ではなかった。移民たちに与えられた土地は未開拓で、伝染病で息絶える者もいた。沖縄からも忘れ去られてしまう中、数々の試練を乗り越え、自分を取り戻そうとする煉。一方、マブイであるもう一人の煉はチェ・ゲバラに出会い恋に落ちてしまう…。果たして煉の魂の行方は?

 奥泉光、京極夏彦、筒井康隆、林真理子、夢枕獏といった選考委員によって受賞作に選ばれた『ヒストリア』および池上には、正賞として記念品(名入り万年筆)と、副賞の100万円が贈られる。贈賞式および祝賀会は11月24日(金)で、「第37回 横溝正史ミステリ大賞」と「第24回 日本ホラー小説大賞」の贈賞式・祝賀会と一緒に執り行われる予定だ。

池上永一(いけがみ・えいいち)
1970年沖縄県那覇市生まれ、のち石垣島へ。1994年、早稲田大学在学中に「バガージマヌパナス」で第6回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。1998年、『風車祭(カジマヤー)』が第118回直木賞候補となり話題に。以後、『レキオス』や『シャングリ・ラ』などの壮大なスケールのSF作品、『テンペスト』『黙示録』などの沖縄を舞台にした歴史時代作品などで注目を集める。南米文学に影響を受け、沖縄との共通点を見出してマジック・リアリズムを作品に取り入れている。著書に『トロイメライ』『夏化粧』『統ばる島』など多数。

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