世間を騒がせた凄惨な事件の真相・殺人犯の心理が形成される過程とは…。猟奇殺人に関するノンフィクション5選

社会

公開日:2017/11/1

 神奈川県座間市の閑静な住宅街にあるアパートの一室から9人の遺体が発見された。白石隆浩容疑者は9人の殺害を認め、自宅の浴室で遺体を切断したと供述している。ワンルームのアパートからはクーラーボックスやRVボックスに入れられた死体が発見された。死臭が充満する部屋で平然と暮らしていた同容疑者。その異常さが際立った衝撃的な事件だ。

 私たちは、凄惨な事件が起こると、犯罪者たちの異常な心理や事件の真相にまず目が行く。もちろん、それらを知ることも大事だが、その犯人の特異体質が形成されるまでの過程や、事件のその後についても知っておく必要がある。本記事では、世間を騒がせた残忍な事件に迫ったノンフィクションを紹介したい。

 2007年8月の深夜、名古屋の高級住宅街の一角を歩いていた磯谷利恵さんが3人の男たちによって拉致された。男たちは磯谷さんの頭部をハンマーで40回にわたって殴り、殺害。山林に遺棄した。死の直前、磯谷さんは、脅され、体を震わせながらも犯人に対して毅然とした態度を示したそうだ。驚くことに、非道を働いた男たちが知り合ったのは、事件の3日前。携帯電話の闇サイト「闇の職業安定所」の書き込みがきっかけだった…。

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 「人を殺す経験をしてみたかった」。これは、2000年の5月に、愛知県豊川市で主婦殺人事件を起こした17歳の加害少年が捜査員に発した言葉だ。その日、少年は学校帰りに見知らぬ老女を殺害。その後、帰宅した夫の首も刺した。夫は軽症を負いながらなんとか警察に通報したが、妻は顔面や頭部をかなづちで殴打されたうえ、包丁で全身を40箇所以上も刺されて死亡。非行歴もなく、まじめで勉強ができたという17歳の少年が突如起こした、残忍な犯行だった。この加害少年の膨大な“供述”をもとに関係者を取材し、事件の真相に迫った一冊。

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 2008年3月19日と23日に起こった土浦連続通り魔事件。第一の犯行で犯人は土浦市内の民家で、パンク修理を装い、玄関先に出てきた初老男性の隙を狙い、背後から首元めがけて包丁を突き刺した。事件直後に都内へ潜伏し、母親へ犯行をほのめかすメールを送り、警察へ挑発的な内容の電話を入れている。そして、4日後。JR常磐線の荒川沖駅で、第二の犯行を起こした。黒い服にニット帽をかぶり、ゴム手袋をはめた金川は、改札付近を駆け抜けながら次々と通行人めがけてナイフを振りかざしていった。やがて駅付近の交番のインターホンで自ら「犯人」と名乗り出たのち、駆けつけた警察官によって逮捕された。第一の犯行を含めて、2名が死亡、7名が重傷を負う結果となった。犯人の元死刑囚・金川真大は「自分で自殺できないから他人にやってもらおうということ」と語っている。死刑になるために無差別殺人を引き起こした心理とは…。

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 1979年から1990年にかけて、栃木県足利市、群馬県太田市という隣接する2市で、4歳から8歳の5人の少女が誘拐または殺害されているという大事件が起こった。その中の一つが、冤罪を司法が認めた、あの「足利事件」。未解決事件とされていたそれぞれの事件を同一犯による連続事件だと睨んだ著者は、真犯人を追い詰め、事件の真相を暴いていく。

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 1999年に埼玉県桶川市で起こった「桶川ストーカー殺人事件」。ストーカー規制法が作られるきっかけになった事件だ。JR高崎線桶川駅前で、女子大生がペティナイフで刺され殺害された。凄惨な内容もさることながら、この事件で浮き彫りになったのは、埼玉県警上尾警察署の不正と怠慢。犯罪の内容も警察の対応も、あまりに非道すぎて逆にリアリティが稀薄になる程の精密な記録文書でもある。

 関係者の生々しい証言やあまりにひどすぎる事件の詳細、目覆いたくなるような記述も多い。しかし、私たちには目をそらさず、改めて事件を見つめなおし、現代日本の闇を問い直す必要があるのではないだろうか。

文=丸川美喜