スターバックスの元社長が綴る、ビジネスファンタジー『カップは満たされてる?』

ビジネス

公開日:2017/11/30

 元スターバックス・インターナショナル社長の、ビジネス哲学を表現した小説『カップは満たされてる?』が2017年11月27日(月)に発売された。

 前著『スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則』では、「どうやってコーヒーで人を喜ばせるか」「人を育てるにはどうすればいいか」というビジネスの考え方を述べていた。同書では一風変わった小説という形にすることで、実践方法を記述している。

 物語の舞台は歴史と伝統がありながら、今や経営が危ぶまれているヴェリティ・グラスワークス社。主人公であるステッドファストがCEOとして出社する場面が幕開けとなる。彼を待ち受けていたのは、不思議なカップと様々な立場の仲間たち。ヴェリティのことなら何でも知っていると自負する教授、腕力には自信ありという警備員…。次から次へと個性豊かなキャラクターが現れる。彼らといっしょにステッドファストはヴェリティを救うための「究極の宝物」を探す旅に乗りだす。奇想天外な出来事に遭遇し、ときには生命の危険にさらされながら、チームは一丸となって突き進む。果たして、「究極の宝物」は手に入れることができるのかなど、展開していくストーリーは読み手を飽きさせない。

advertisement

 ビジネスマンとして知っておきたい大切なエピソードも盛り込まれている。例えば、常に自分たちの中心的な価値観を確認し、共有できる人たちといっしょにいるよう心がけること。著者がいう価値観とは、宣言すればいいものではない。私たちが自らつくり、実践し、他の人にも見えるようになったときにはじめて存在するようになるものだ。

 同書はフィクションだが、根底には多くの会社やリーダーたちが経験した真実がある。前線にいる従業員や野望に燃えるリーダー、経営者などさまざまだ。仕事をする人なら誰でも同書のステッドファストや彼のメンター、同僚たちから学べるだろう。

 登場人物の台詞にはハワードがスターバックスを育てる中での経験、経営哲学の想いが込められている。「自分の仕事に真剣に取り組んできちんとこなせば、結果はついてくる」「リーダーが迷いや怯えから、自分たちの原点や基幹のビジネス、本来の目的を見失ったとき、会社は傾く」「ひとりひとりが“わたしたち”の組織の一員でなければならない。“わたし”の組織には自分以外の人の居場所はない」といった言葉から、同書に込められた想いを感じ取れるはず。

「共通の目的を持った人々がひとつにまとまるとき、魔法は起こる。みんなが正しい価値観を持って、正しいことをすればおのずとそうなるだろう。これはチームのみんなといっしょにその魔法を探す、いや、魔法を生みだす物語だ」と著者は語る。私たちは短期的な目標の達成に気をとられ、組織に命を吹きこむ人間の問題を軽視しがちだ。ハワードは物語の力を利用して、私たちが目の前の利益にこだわるあまり、本質的なものをつくる努力を怠っていると気づかせてくれる。そして、抜け出すための手を差し伸べているのだ。

 同書の最後には、ハワードの考えをより理解するための「リーディング・ガイド」と、仲間とともに成長するための「ディスカッションのための質問」も掲載。ハワードの哲学を学び取り、よりよい人生を送るための役に立つはずだ。

 経験豊富なビジネスマンの想いが込められた物語から、仕事の問題を解決する「魔法」を生み出そう。

ハワード・ビーハー
1989年、スターバックスにシニア・エグゼクティブとして入社。セールス&オペレーション担当上級副社長、スターバックス・インターナショナル社長、スターバックス・ノースアメリカ社長他要職を歴任。1996年から2008年までスターバックスの取締役も務めた。シアトル在住。主な著書に『スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則』がある。

川添節子
翻訳者。慶應義塾大学法学部卒。主な訳書に『シグナル&ノイズ』『バランスシートで読みとく世界経済史』『ベストセラーコード』『フランス人が「小さなバッグ」で出かける理由』『ムーンショット!』などがある。

※掲載内容は変更になる場合があります。