石田衣良、30代男女の恋愛実態に驚き「腰が引けている」

文芸・カルチャー

2012/2/21

自分と周囲を見渡してみよう。ステキな恋愛と結婚の機会が減ってきているような気がしないだろうか。そんな今どきの気分を活写しつつ、きらりと希望の光を感じさせるのが、石田衣良さんの新作『スイングアウト・ブラザース』(光文社)。ふられたばかりの33歳のイケてない男3人が、憧れの先輩・美紗子と、彼女がアレンジする女性講師の指導を受けながら、「モテ男」を目指す痛快成長ストーリーだ。

「この男3人は、書いていて楽しかったですね。モテないけど、友達と長く付き合える、性格がいい奴ら。いつかは相手がみつかる人たちです。連載していたのは『小説宝石』。新本格ミステリーが好きな男性読者が多く、本を読む体力・知力がある。このタイプの男性は、壁を一つ乗り越えると、けっこう恋愛もうまくいく。そういう読者に向けて何か書いてみようというのがきっかけでした」

また、最近の社会の動きも気になっていたそう。その一つが交際相手のいない人は30~34歳の男性で63.4%、女性では53.4という調査結果(※)だ。

「この数字を見たとき、うわ~、日本はすごいところまできちゃっているなって思いましたね。今、20代30代は恋愛から腰が引けているように感じます。彼らをいい気分で解きほぐす小説を書いてみたいとも思ったんです」と石田さん。

「いい気分で解きほぐす」という狙いは見事に達成されている。「いい男」に成長していくエピソードが実に的を射ていて、しかも無理がない。

たとえば、清潔感のある肌が与える好印象、低価格スーツでもジャストサイズを選ぶと見栄えが格段に上がること、あるいは女性の話をきちんと聞く男性が好まれる……など、リアル恋愛でも参考になるものばかり。恋愛指南本より、よっぽど役立ちそうだ。こうしたエピソードは石田さんの実体験なのか。

「書いているときはどんな話を盛り込もうか相当困っていますから、これまでに体験したことや取材したこと、全部投げ込んでいます(笑)。いろいろ考えずに、異性と付き合ってみるといいんですよ。女性は男性のいいところをパッと見つけますよね。この感覚は遺伝子の多様性を保つために、神様が仕組んでくれたことなんだから、信じて突き進んでみてほしいんだよね」

そして、石田さんはいつも思っていることとして、こう語る。
「少し背伸びした本を選び続けることを男女限らずやってほしい。みんな、あまりに本を道具として使い過ぎていると思うんです。泣きたい、感動したい、自分はいい人だと思いたいときに読む本ばかりが売れているでしょう。しかし、ちょっとした心のおしゃれみたいなものを失くしたまま、本選びをし続けていると、いつかしっぺ返しを喰らいます。しかも、本に限らず、何においても、間違いたくない、外れをつかみたくないという気持ちが強い。ちょっと、あさましいよね。こういう感性が男女のつき合いを危うくしている。そういう悪循環、どこかで断ち切らないと」

恋愛に不器用な3人の男は女性にとっても合わせ鏡。男女ともに、気持ちいい恋愛へのヒントがたくさんつまった、新感覚の“教養”小説。

※第14回出生動向基本調査「結婚と出産に関する全国調査」:国立社会保障・人口問題研究所