駅伝の強豪校の実話を収めた『駅伝ガールズ』 女子高生たちの青春と友情を丁寧に描いた1冊

小説・エッセイ

公開日:2018/1/3

 駅伝の強豪校である広島県立世羅(せら)高校の実話を収めた『駅伝ガールズ(角川つばさ文庫)』(菅 聖子:作、榎 のと:絵/KADOKAWA)が発売された。

 いままでに一度も入賞経験がない弱小女子陸上部がいきなり全国大会で優勝し、全国駅伝で男女同時優勝を果たすまでの実話が感動的に描かれている。

 物語の舞台は、2015年に開かれた女子第27回全国高等学校高校駅伝競走大会。広島県立世羅高校は男子陸上部が駅伝の常連になっているため、この年も男子の活躍に注目が集まっていた。

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 そんななか、密かに闘志を燃やしていたのが、女子陸上部のキャプテン・小吉川志乃舞(こよしがわ しのぶ)。「ウチらも優勝!」と、全国駅伝への目標を宣言した小吉川を中心に、チームメイトはひとつにまとまっていく。

 努力を積み重ねた女子陸上部は大会で全国優勝を掴みとり、広島県立世羅高校は男女同時優勝という快挙も成し遂げた。

 しかし、栄光の影には憂いがつきもの。輝かしい結果を掴むまでには、恋愛やお菓子の禁止といった女子ならではのさまざまな苦労があった。チームメイトのスランプやメンタルの弱さを乗り越えた先では、小吉川自身もチームメイトとの関係性に悩むようになる。個人競技である陸上はチームメイトすらもライバルになるため、チームメイトとの絆にも歪みが生じてしまうのだ。

 さまざまな困難を乗り越えながらひとつの夢を目指していく姿は、まさに青春。作中で描かれる10代女子ならではの多感な感性や固い友情は、読者の共感と感動を誘うだろう。

 年の初めを祝うこの時期は、年始恒例の箱根駅伝を楽しむ人も多いはず。栄光の裏側に隠されたドラマをじっくりと楽しんでみるのもよさそうだ。

文=古川 諭香