生き残る人材は本を1トン読んでいる? 働く大人が知っておきたい“学び方”

ビジネス

公開日:2018/2/8

img01.jpg
『働く大人のための「学び」の教科書』(中原淳/かんき出版)

 大人の「学び」の重要性を解説していく『働く大人のための「学び」の教科書』が、2018年1月15日(月)に発売された。

 著者は、人材育成・キャリア開発・リーダー育成に関する様々な研修やワークショップを実施する東京大学大学総合教育研究センターの准教授・中原淳。過去に行った人材開発研究に基づいた大人の「学び」を、専門用語を抑えた読みやすい文章で紹介していく。就活生や新入社員、管理職に定年退職を控えている人など、世代を問わずに学びが深まる1冊になっている。

■「100年時代」はキャリアを登って下りて、新たに登る時代
 昔は市場環境が安定していて、1つの組織に入ったら右肩上がりで給与が上がっていたもの。転職なども少なく、一生1つの組織に奉職できたため、学び直すことや変化を求めることは、それほど必要ではなかった。

advertisement

 しかし今の私たちは、ゲームのルールが日々変化していく社会(ゲームチェンジング社会)に生きている。現代社会の変化に対応していくためには、学び、変化し続けていくことがどうしても求められる。大人が新世代の子どものレベルに堕してしまわないためには、未来を構想して次のステージに自らを振り向けなければならない。

 そのためには、ピークに達した自分のキャリアを横に見つつ、長い仕事人生をまっとうするための「下山」、再び山に向かう「再登山」が求められる。しかし、仕事人生の長期化に面喰ってしまって下山途中で「遭難」する人も急増しているという。

img02.jpg

■読書とは「自分のなかに地図をもつこと」
 大人の学びにとって、最も重要な要素のひとつが読書。本を読んで知識をアップデートしておくことは、不確実性の高い時代にあって最も重視しなければならない。「本を1トン読む」とは、ヤフー株式会社社長・宮坂学の言葉。宮坂は2012年からはじまったヤフー株式会社の変革を率いた経営者で、多読家でもある。かつては研修で「本を1トン読め」と若いメンバーに檄を飛ばしたエピソードも。「本を1トン読め」は「メタファ」だが、その言葉には「本をたくさん読め」という言葉では表しきれない重みがある。

img03.jpg

 首都圏のサラリーマンの平均通勤時間は往復116分(2014年不動産サービスアットホーム調べ)、単純計算でも年間で2万5520分。これは、時間に換算すれば425時間に達する。この時間を読書にあてている人と、スマホでのゲームにあてている人では、「自分のなかの地図の広がり」や「他者の経験の代理学習」に明確な差が生じることはいうまでもないだろう。

■やることをOSとアプリに例えて、わかりやすく解説
 Chapter1では、今、大人が大人になってまでも、なぜ学ばなければならないのかを主張。環境の変化・仕事人生の長期化など、大人になっても「学び」とよいかたちでつきあっていく必要性が論じられる。

 つづくChapter2と3では、学びの「3つの原理原則」として“背伸びの原理”、“振り返りの原理”、“つながりの原理”を解説。そして、7つの具体的な行動「タフな仕事から学ぶ」「本を1トン読む」「人から教えられて学ぶ」「越境する」「フィードバックをとりに行く」「場をつくる」「教えてみる」を紹介していく。「3つの原理原則」はOS、「7つの行動」はアプリと捉えると理解しやすい。

img04.jpg

 Chapter4では「学びの履歴書」として、7人のビジネスパーソンの「学びの様子」を事例として提示する。登場するのは、いずれも自ら学ぶことに向き合い、スタイルを築いた人ばかり。

img05.jpg

 同書には大人が効果的に学ぶために、参考にしたい原理原則や行動原理がちりばめられている。我流のまま学ぶことに向き合うのではなく、自ら学びたいものを学ぶスタイルを確立してみよう。“「会社の看板」に頼らず「自分」に力をつける”と考えたMさん(46歳・男性)のケースなど、著者の解説とともに本人の「学びから得たもの」や「うまくいかなった学び」を掲載。長い人生を乗り切るためにも、大人に求められる「学び」の技術を手に入れよう。

中原淳(なかはら・じゅん)
東京大学大学総合教育研究センター准教授。東京大学大学院学際情報学府(兼任)。大阪大学博士(人間科学)。北海道旭川市生まれ。東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米国・マサチューセッツ工科大学客員研究員等をへて、2006年より現職。「大人の学びを科学する~働く大人の学びと成長」をテーマに、企業の人材開発・リーダーシップ開発について研究している。専門は人的資源開発論・経営学習論。おもな単著に『職場学習論』、『経営学習論』、『研修開発入門』、『駆け出しマネジャーの成長論』、『はじめてのリーダーのための 実践! フィードバック』など、他共編著多数。人材育成・キャリア開発・リーダー育成に関する様々な研修、ワークショップを実施している。

※掲載内容は変更になる場合があります。