年末年始はコミックが2桁の落ち込み コミック市場の縮小が業界のリスクに

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更新日:2018/1/27

 大手取次会社の日本出版販売(日販)とトーハンが毎年発表してい年末年始の書店店頭の売上調査で、いずれもコミックが大幅に落ち込んだ。コミック、とりわけいままで比較的底堅かったコミック単行本の売れ行きが一昨年頃から急激に悪くなっていることが、出版業界にとっては大きな脅威になっている。

 日販の調査による年末(2017年12月29日~31日)年始(2018年1月1日~1月4日)の売上前年同期比は5・2%減、トーハンは同4・9%減といずれも5%前後のマイナスとなった。特にコミックは日販が同17・8%減、トーハンが同20・3%減と落ち幅が大きかった。

 ほかの分野では、書籍、雑誌がいずれもマイナスで、唯一、雑貨や文具などの商材(日販は「開発品」、トーハンは「マルチメディア」と呼ぶ)が日販6・7%増、トーハン7・2%増と伸びた。

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 コミックの内訳をみると、日販ではマンガ週刊誌の連載などが単行本化される「雑誌扱いコミック」が同20・0%減、トーハンではコミック全体が同20・3%減とそれぞれ2割の落ち込みである。

 出版市場を調査している出版科学研究所(出版科研)が毎月発行している『出版月報』によると、コミック単行本は2017年1~11月のうち2桁減少した月が6カ月あったといい、この2年ほどの市場縮小は急激だ。

 この原因が電子コミックの拡大にあることは間違いないといってよいだろう。電子コミックの市場は2012年以来ほぼ毎年20~30%の成長率で、2016年には前年比26・6%増の1617億円に拡大した(インプレス総合研究所『電子書籍ビジネス調査報告書2016』)。

 これに対して紙のコミック単行本の市場は1947億円、同7・4%減(出版科研)にまで縮小している。このペースでいけば、おそらくコミック単行本と電子コミックの市場は2017年に逆転すると思われる。

 出版業界では1995年以来、雑誌の市場が急速に縮小したことで、雑誌の配送が支えてきた出版物流の危機が顕在化した。これに加えて、いままで比較的堅調だったコミック市場が縮小すれば、さらに業界の再編を加速させることになるだろう。

記事提供=文化通信