「同性愛視点」「腐女子視点」… 固定観念をぶち破る「攻め」のヌード画集

エンタメ

2018/1/31

 美女から男性、肥満ヌードまでを網羅した攻めのヌード画集『ART GALLERY テーマで見る世界の名画 5 ヌード かぐわしき夢』が、2018年1月15日(月)に発売された。

 名画のヌードというと、「若く美しい女性の艶やかで豊満な裸体を描いたもの」というイメージがあるだろう。しかし美術史全体から見ると、それはごく最近の傾向にすぎない。古代ギリシア・ローマ彫刻の時代は、ヌードといえば若い男性が主なモチーフで、そのたくましい筋肉美を愛でるかのごとく再現している。もちろん、そこには同性愛的な視点があり、その関係性を鑑賞して喜ぶ腐女子的視点があることも否定できない。実際、美術作品におけるヌード作品のモチーフの男女比はほぼ半々になっている。

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「ピュグマリオンとガラティア」ジャン=レオン・ジェローム
生身の女性が苦手で自分の作った彫像に恋をし、キスによって生命を得た彫像と結ばれるというBL的設定の神話がモチーフ

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「ラオコーン」エル・グレコ
神官を務める老人の男性をメインモチーフに奇妙に歪められた肉体や表情で不穏かつ強烈なイメージを表現

 同書は、そんな美術史の現状に即して、積極的に男性のヌードを掲載。女性のヌードは、美女だけでなく老女や肥満体女性のモチーフもあり、中にはヌードの遺体まで紹介している。

 網羅されたヌードを見ていくうちに、人はなぜヌードを見たいのか、描きたいのかという欲望の根源にたどりつく。そして、若くて美しい女性を性的な欲望を持って見つめ、その美しさが描かれた絵画を優れていると感じるのは、近代に生まれた価値観の枠に囚われているだけだとわかるはず。そして「美しさ」とは、とても自由で多様性のあるものと気づくだろう。

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「聖セバスティアヌス」グイード・レーニ
矢で射られても死ななかった聖セバスティアヌスを美少年の顔とたくましい筋肉で表現

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「ヒュラスとニンフたち」ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス
神話をモチーフにしながら同時代的な美しさを持った女性を描くラファエル前派の画家

 もちろん、近代の価値観の枠から生まれてきた新しいエロスもある。欲望の発露は、服飾という社会的な記号の下に隠された“その下”にあるものを暴くことに対して生まれるもの。表現が多様化してさまざまな流派が生まれ、それぞれの手法でデフォルメしたヌードの表現も紹介していく。

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「ネヴァーモア」ポール・ゴーギャン
タヒチに移住した後期印象派の画家ゴーギャンは、現地の黄色い肌を保つ女性たちの体を積極的に描いた

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「アトリエ」フェルナンド・ボテロ
デブヌードの代表的画家。肥満体の女性を描く画家自身も描き込まれている

 美術史の研究的な視点から「ヌード画の画家とモデルの関係性」を探っていくという見方もでき、鑑賞者はそこに“覗き見”的なエロティシズムと興奮を感じられるはず。

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「アヴィニョンの娘たち」パブロ・ピカソ
キュビズムのフォルムにデフォルメされた五人の裸婦たち。美とは何かを突きつけるピカソの代表作

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「家族」エゴン・シーレ
家族ヌード。いびつにデフォルメされた肉体や肌の表現がシーレの持ち味

 ヌード画の歴史をなぞった同書は、ごくイメージ的にしかヌードをとらえていなかった人の固定観念をぶち破ることだろう。

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「ポンペイ」ポール・デルヴォー
夢の中のような象徴的なイメージを持ちつつ乳房や陰毛の表現はリアル

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