225万部突破! なぜ『思考の整理学』は東大生から根強く支持されるのか?

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公開日:2018/3/8

 1983年に刊行され、1986年に文庫化された外山滋比古の『思考の整理学』が「2017年東大生協文庫売上」1位を獲得。2016年に続き2年連読で1位を獲得し、2008年に初めて1位になってから10年間で7度目の快挙に輝いたことがわかった。

『思考の整理学』は、「自らの体験に則し、独自の思考のエッセンスを明快に開陳する恰好の入門書」といった学術エッセイだ。もともと16万部のロングセラーだったが、2007年に岩手県の「さわや書店」店頭に並んだ「もっと若いときに読んでいれば…」というポップをきっかけに人気が再燃。2008年には東大・京大生協の書籍販売ランキングで1位を獲得し、“東大・京大で一番読まれた本”のフレーズが生まれた。

 このフレーズを帯で使ったところ売上が加速し、2009年には累計発行部数が100万部を突破。その後も変わらず新たな読者を増やし続け、2016年には文庫化30年目にして200万部を突破し、時代を超えて読み継がれている。

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 同書には、「これからの時代で必要とされるのは、自力で飛び回れる飛行機人間である」「思考を整理するうえで、寝かせることほど大事なことはない」「本当にやるべきことは、1つのことだけに注力しているとなかなか見えてこない」「知識をいたずらに所蔵してはいけない」「必要なもの以外は忘れてしまうべきだ」など、時代に左右されることのない独自の洞察が満載。ストイックに“やらなければいけない事”を並べ立てる一方通行な中身ではないため、実生活で思い当たる事柄に改めて気づくはず。30年以上前の本だが、内容が普遍的で古くならないことがロングセラーの最大の要因だろう。

■なぜ東大生が根強く支持するのか? 東大生の感想…外山滋比古講演会「思考の整理学を語る」より
・今の時代に必要なのは、情報を手に入れることよりも「捨てる」ことなのだ。
・他分野との接触、混在が新しい思考法を生み出すという考えがとても新鮮に思えた。
・大学やその先で求められている「学び」に対する姿勢が、少し分かった気がする。
・知識に偏った勉強をしてきたからこそ、それじゃいけないんだ、と思いを新たにした。
・考えがまとまらない時、くよくよするのがいちばんいけない。
・メモをとり、整理する癖がつきました!
・根底にある理念は自ら学べ、という点だと感じた。
・高校生の時は意味が良く分からなかったけれど、大学に入って文章を書くようになり、先生の仰っていたことの重要性が良く分かった。
・今の自分を肯定して考えることの楽しさを教えてくれます。
・時を経ても変わらない価値がある。
・この本を読んでいないなんて、人生の半分を損している。

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“知識を詰め込むだけでは、考える力は養われない”という著者のメッセージは、知識偏重型の勉強をしてきた東大や京大の学生をはじめ、多くの読者に伝わっている。200万部以上読まれるほどの大ベストセラーになったのは、大学生のみならず社会人や年配の読者、誰にとっても必要とされていることの表れであり、年代も世代も超えた支持を集めた結果。自分の頭で考え、自力で飛翔するためのヒントが詰まった同書は、コンピューターやAIが発達した今こそ、その重要性を帯びているのかもしれない。

外山滋比古(とやま・しげひこ)
1923年生まれ。文学博士、評論家、エッセイスト。東京文理科大学英文科卒業。『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学などで教鞭を執る。専攻の英文学に始まり、テクスト、レトリック、エディターシップ、思考、日本語論の分野で、独創的な仕事を続けている。著書に『思考の整理学』『ことわざの論理』『「読み」の整理学』『知的生活習慣』など多数。

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