短くても伝わる文章のコツ。文章力は「要約力」で決まる!

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公開日:2018/3/20

 短く、正確に伝わる文章の書き方を紹介する『博報堂スピーチライターが教える 短くても伝わる文章のコツ』が、2018年3月5日(月)に発売された。

 著者・ひきたよしあきはやさしく、わかりやすく、さまざまな年代の人たちへ向けて文章を書くエキスパート。広告会社・博報堂でコピーやCMをつくる仕事に30年以上携わってきた。さらに政治家や企業のトップなど、さまざまな得意先に代わってスピーチを書いたり、明治大学をはじめとした多くの大学で「言葉の持つ力」や広告コミュニケーションについての講義を担当している。また、3年前からは「朝日小学生新聞」で小学生に向けたコラムも連載中。

 これまでにも「要点」をまとめるための本は、たくさん出版されている。しかしその多くは短くまとめたせいでつまらない文章に。機械的に短くするなら、今やAIにまかせたほうが正確な文章になる時代といえる。同書では「短くなっても面白い。つい読んでみたくなる、人に話したくなるような文章」を目標に、文章を書くコツを伝授する。実際にその一部を紹介しよう。

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<察してもらう文章を書かない>

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「本商品は、直射日光のあたる場所で保管すると、変色する恐れがあります」。商品の注意事項などでよく見かける文章で、「直射日光のあたらない場所に保管すればいいのだな」とわかる。しかし「恐れがあります」という曖昧な表現では、“保存場所を変えるべきなのか”まではわからない。相手に察してもらう文章では誤解を生んでしまうので、本当に相手に動いてほしいなら、「本商品は、直射日光を避けて保管してください」と強く指示する必要がある。

「人からの評価が怖くて文章が書けない」「文章を書くと『偉そうだ』と言われる…」。それを避けようと努力するうちに文章がどんどん長くなり、支離滅裂になっていく。きちんとした文章を書くためには「要約力」が必要。本や書類、会議や商談の内容から要点を見つけて正確に伝える「要約力」が、短くても伝わる文章を書くための根幹になる。

<「ジキル文」と「ハイド文」>

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 二重人格を題材にした、ロバート・ルイス・スティーブンソンの小説『ジキル博士とハイド氏』にならって、建て前を「ジキル文」、本音を「ハイド文」と分けていく。人から愛される文章は、この「ジキル文」と「ハイド文」のさじ加減で決まる。

 2016年、オバマ前アメリカ大統領が広島でスピーチを行った。その冒頭は、次の一文からはじまる。「71年前の明るく晴れ渡った朝、空から死神が舞い降り、世界は一変した」。この文章は、一見すると美しい叙事詩のよう。しかし本心は、「原爆を落とした国がアメリカであることを語りたくない」ということ。言いたくないこと、言えないことを語らずに世界の人を感動させている。天才スピーチライター、ベン・ローズ前大統領副補佐官の才能が遺憾なく発揮された「ハイド文」だ。

 もちろん、「ハイド文」は文学的な表現だけではない。たとえば「圧倒的に」「加速度的に」「100%」「絶対に」「必ず」など、威勢のいい言葉がちりばめられた文章がある。このような文章を読むときには、飾り言葉を塗りつぶしてから読んだほうがいい。すると「できていない」「決まっていない」「進んでいない」といった部分が浮き彫りに。うまくいっていないことを隠したい「ハイドの気持ち」が、こうした偽りの威勢のよさに表れる。

 文章力はビジネスシーンだけでなく、プライベートでも役立つもの。同書を読んで「短くても伝わる文章」を書けるようになろう。

ひきたよしあき
博報堂スピーチライター、クリエイティブプロデューサー。1984年、早稲田大学法学部卒。学生時代より「早稲田文学」学生編集委員。NHK「クイズ面白ゼミナール」クイズ制作などで活躍。1984年、博報堂に入社し、CMプランナー、クリエイティブディレクターとして数々のCM作品を手がける。その後、おもに行政の仕事を担当するようになり、現在では、政治、行政、大手企業などのスピーチライターを務めている。氏の書くスピーチは、依頼者の発言の要点を見事にとらえ、人の心を動かすと、多くのエグゼクティブから絶大な信頼を得ている。また、明治大学、慶應義塾大学、日本大学などで、「広告コミュニケーション」「日本語のもつ潜在的なちから」をテーマに講義や講演を行うほか、「朝日小学生新聞」に長年コラムを寄稿するなど、若者に日本語の潜在能力や素晴らしさ、コミュニケーションの重要性を伝えている。著書に『大勢の中のあなたへ』、『机の前に貼る一枚』、『あなたは言葉でできている』などがある。

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