田野アサミ「妄想するのが大好き」

芸能

更新日:2012/5/25

 声優・女優として活躍する田野アサミさんが書店で見た瞬間に釘付けにされた小説が、宮下奈都の『誰かが足りない』。運命的な出会いを感じたその表紙に描かれているのは、レストランの一席だ。

 「私、普段から妄想をするのが大好きなんですよ。カフェに一人でいると隣の席の見知らぬ人の人生を勝手に頭の中で作り上げたりして。それを小説の形で表現しているのがこの作品でした。しかも、どのエピソードも実際に起こりうる内容ばかりで。そのせいか、まるで誰かの人生をのぞき見するような感覚を味わうこともできるんです」

 主役は、6組の予約客。はたして、なぜ彼らがこの店を訪れたのか。その“あくまでも個人的”な経緯が一篇ずつの小説として紡がれている。
 人生に迷ったり、大切な人を失ったりと満たされない“何か”を背負って生きている登場人物たち。それでも、「心が沈んでいる時にこそ読んでほしい」と田野さんは言う。

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 「彼らが抱える悩みに対して、はっきりした答えを描いているわけではなくて、読者に自分で考えるための余白を残してくれている。そこがいいんです。“不安なのは自分だけじゃない、だから私もがんばらなきゃ”っていう勇気をもらえるんです」

 『誰かが足りない』同様に、田野さんが共鳴を受けた作品がある。声の出演中のアニメ『スマイルプリキュア!』だ。
「キャンディという小さな妖精が自分の星の危機を救うために一人で地球に降りてきて、5人の伝説の戦士プリキュアを探し出すんですね。初めて訪れる場所で、冒険し成長していくその姿に、台本を読みながら、共通するものがあるなって」

 声優業を始めて一年。それまでの映像の仕事とは違い、「声だけでいかに感情を表現するかが難しい」と話す。
「アフレコ現場では身振り手振りを交えて収録に挑んでます。それを見て先輩方は、『アサミはいつも自由だな。いいぞ、そのままで』って言ってくれる(笑)。その言葉にいつも助けられ、勇気づけられます。どんなことにも自信を持って自分らしくやるのが一番なんですよね。それを、今は日々実感しています」

(ダ・ヴィンチ3月号 あの人と本の話より)