松坂大輔、筒香嘉智らを輩出した甲子園常連校・横浜高校野球部の“強靭さ”を支えたのは「食」だった
公開日:2018/6/21
創部から71年を数える横浜高校の野球部は、甲子園に出場して通算51勝、さらに春3度、夏2度の優勝を果たしてきた強豪だ。これまでに輩出したプロ野球選手は、なんと61人もいる。
この名門校の強さを培い、長らく地位を保ってきたものは、名将と呼ばれた前監督の渡辺元智氏が自ら「食」にあるという。球児たちの活躍を支える横浜高校野球部合宿所の「食」には、いったいどんな秘密があるのだろうか? 6月21日(木)に発売された『甲子園、連れていきます! 横浜高校野球部 食堂物語』(渡辺元美/徳間書店)は、選手たちの強い身体と精神を「食」の面で支えてきた著者によるスポーツノンフィクションだ。
■球児たちが本当に必要としていたのは、カロリー計算よりも何よりも、おふくろの味だった
著者の渡辺元美さんは、前渡辺監督の次女で、今年3月まで20年にわたって横浜高校野球部の寮母を務め、1000人以上に及ぶ部員たちに接してきた人物。本書は、毎日血の滲むような厳しい練習に明け暮れる球児たちを「厨房」から支え続けた、寮母さんと球児たちとの食堂物語である。
高校野球に詳しくないという人でも横浜高校の名を知らない人はほとんどいないだろう。それほどの強豪野球部では、グラウンドで脚光を浴びるスター選手もいれば、同級生や下級生のユニフォームを洗濯するという縁の下で努力を続ける部員もいる。寮の食堂だからこそ見せる、高校生としての素顔の泣き笑いが、本書で語られる数々のエピソードに詰まっている。試合で勝ったか負けたか、選手としてレギュラーになるか補欠か、それだけではなく部活を頑張る全ての子どもたちを「おふくろの味」で支えてきたのが、寮母だった渡辺さんなのだ。本書のタイトル『甲子園、連れていきます!』は、その渡辺さんへ向けて、選手たちが感謝を込めて食堂のホワイトボードに実際に書き残したメッセージだ。
本書には、渡辺さんと多くの選手たちとが重ねてきた触れ合いや語らい、また葛藤や裏話も収められている。「日本一」を目指してハードな練習を毎日重ねる球児たちが必要としていたものは、単なるカロリー管理ではなく、「おふくろの味」だったことを実感させる一冊だ。
毎年甲子園を応援しているという高校野球の熱烈なファンはもとより、野球というジャンルの垣根を超えて、スポーツに打ち込む選手や子どもたちを応援している全ての人、また部活に熱心に励むお子さんを持つ人々にとって、本書は心強い支えになるだろう。
本書の構成
はじめに
第一章 母の背中・父の足跡
うれしいはずの優勝も実はプレッシャーに!?
毎食100枚の食器を洗い、一日40合の米を研ぐ日々
父も母も自宅も合宿所も、すべてが野球一色だった
監督か、父か? 野球と家庭の狭間で揺れ動く親心
ふと気が付けば、母だけでなく父とも同じ道を歩んでいた
第二章 「食」は選手との大切なコミュニケーション
専門学校で学べたことと、合宿所でしか学べなかったこと
脱走に次ぐ脱走で気付かされたものとは!?
監督の機嫌まで良くしてしまう頼りになる縁の下の力持ちたち
応援する側が応援される側に!? 甲子園、連れていきます!
第三章 寮母として大切なこと
先輩キャプテン自ら後輩のために大改革
部員たちの成長を見ること、それが何よりもの幸せ
忙中閑あり茶目っ気たっぷりな部員たち
時代とともに変化していった、選手たちとのコミュニケーション
第四章 別れのとき、旅立ちのとき
選手たちの反応と母親たちの声、喜びを感じるとき
寮母と実母孫と監督の狭間
いよいよ父が監督として最後の日がやってきた
卒業、そしてそれぞれの道を歩む
横浜高校野球部合宿所 お昼の人気メニュー
あとがき
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