芥川賞候補作を含む超弩級の新星が放つ奇跡のカップリング小説集がいよいよ発売! 古谷田奈月『無限の玄/風下の朱』

文芸・カルチャー

2018/7/14

『無限の玄/風下の朱』(古谷田奈月/筑摩書房)

 今年5月16日に発表された第31回三島由紀夫賞受賞作の「無限の玄(むげんのげん)」と、いよいよ7月18日に選考会と発表を控えた第159回芥川龍之介賞の候補となっている「風下の朱(かざしものあか)」を収録した、期待のカップリング小説集が7月14日(土)に発売される!

 本作で描かれるのは、死んでは蘇る父に戸惑う男たち、魂の健康を賭けて野球に挑む女たち――。若手作家の放つ注目の話題作から目が離せない!

■賞の選考委員は、この注目作をどう読んだ?

・三島由紀夫賞選考委員 辻原登氏の選評

私はこの若い作家に、前作の『リリース』の時から期待し、注目していた。『リリース』の中に次のような一文があったのを記憶している。「薪をくべる者の炎への期待」。薪をくべる者も炎に期待する者ももちろん作者だが、読者にはその炎で暖を取る喜びがある。 (中略) ありえない物語を語るための敷居は低く設定されていて、秀逸な細部とエピソードが重なり、連なるうちに我々はいともたやすくちょっと歪んだ宙間(ちゅうげん)に遊ぶことができる。功績は、主人公〈僕〉の無垢と詩魂にある。(中略)小説を支える思想は柔軟で、かつ揺るぎがない。作者はこのような文体をどこで手に入れたのだろう。

(「新潮」2018年7月号より)

・三島由紀夫賞選考委員 平野啓一郎氏の選評

受賞作の『無限の玄』は、その文体の閃きと余韻に達者なものを感じた。各々の登場人物にも個性があり、父親が何度も生き返るという幻想的な設定も、彼らの反応を通じて一層、効果的となった。野心的ではあるが、あまりに未整理だった前候補作『リリース』と比すれば、長足の進歩であり、設定を絞り込むことで、通念的な家族制度への懐疑という著者の主題は、各段に洗練された。

(「新潮」2018年7月号より)

■作家プロフィール:古谷田奈月(こやた・なつき)


1981年、千葉県我孫子市生まれ。2013年、「今年の贈り物」で第25回ファンタジーノベル大賞を受賞、『星の民のクリスマス』と改題して刊行。2017 年、『リリース』で第30 回三島由紀夫賞候補、第34 回織田作之助賞受賞。2018 年、「無限の玄」で第31 回三島由紀夫賞受賞。「風下の朱」で第159 回芥川龍之介賞候補となる。その他の作品に『ジュンのための6つの小曲』、『望むのは』など。

■第159回芥川龍之介賞の全候補作はこの5作品

・古谷田奈月(こやた・なつき)『風下の朱』 掲載「早稲田文学」初夏号
・高橋弘希(たかはし・ひろき)『送り火』 掲載「文學界」五月号
・北条裕子(ほうじょう・ゆうこ)『美しい顔』 掲載「群像」六月号
・町屋良平(まちや・りょうへい)『しき』 掲載「文藝」夏号
・松尾スズキ(まつお・すずき)『もう「はい」としか言えない』 掲載「文學界」三月号

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■同日発表される第159回直木三十五賞の候補作品はこの6作品

・上田早夕里(うえだ・さゆり)『破滅の王』双葉社
・木下昌輝(きのした・まさき)『宇喜多の楽土』文藝春秋
・窪美澄(くぼ・みすみ)『じっと手を見る』幻冬舎
・島本理生(しまもと・りお)『ファーストラヴ』文藝春秋
・本城雅人(ほんじょう・まさと)『傍流の記者』新潮社
・湊かなえ(みなと・かなえ)『未来』双葉社

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