朝井リョウ 「現役大学生作家」という肩書き卒業

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/27

大学2年生の時、高校が舞台の青春群像劇『桐島、部活やめるってよ』で新人賞デビューを果たした、朝井リョウ。その後は「スポーツもの」「家族もの」「大学生もの」と、多ジャンルなチャレンジを続けてきた。5作目となる最新刊『少女は卒業しない』(集英社)は、廃校が決まった地方高校の最後の卒業式の一日を、7人のヒロインのドラマで綴った連作短編集。本人いわく「原点回帰」の高校青春小説だ。

朝井自身は、第2話「屋上は青」がもっとも思い出深いと言う。高校を中退し自分の夢に進んだ幼馴染みの男子と、優等生の女子が屋上で最後のおしゃべりを交わす物語だ。実は、モデルがいる。

「高校の同級生です。その子も“ダンスで生きていく”と言って、高校を辞めちゃった。不安だったと思うんですよね。その時の自分は何も言えなかったんだけど、後から振り返ったら、言ってあげられたことがあったんじゃないかなと思って。それを、ここで書きました」

朝井は何を書いたか? 本を開いて、確かめてほしい。「図書室ってなんのための場所か知ってますか?」。その答えが知りたいという人も、ぜひ。

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「青春小説を読んでいると、学校という装置に今の自分が放り込まれて、自分の中で眠ってしまっていたことが蘇ってくる感覚があります。その頃の自分にとってかけがえのなかったものが、ふつふつと湧いてくるような。そういう感覚を、この本を読む人にも味わってもらえたらなって」

この春、朝井は大学を卒業して就職、兼業作家になる。「現役大学生作家」という肩書きを卒業する、このタイミングで刊行された本作は、集大成にして次なる道を切り開く第一歩。読むなら、今だ!

(ダ・ヴィンチ4月号「『少女は卒業しない』 朝井リョウ」より 取材・文=吉田大助)