癒やされたい、ワクワクしたい！　欲張りな読書体験をお約束、女子向けエンタメの新しいヒロインたち

　今年で17周年を迎えた女子向けエンタメ小説レーベル・角川ビーンズ文庫。

　主催する角川ビーンズ小説大賞では、男性官僚社会で史上初の女性官吏となる主人公を描きシリーズ15周年を迎える『彩雲国物語』や、男装令嬢が活躍する冒険活劇『身代わり伯爵』シリーズなど、さまざなヒロインたちを送り出してきた。

　本年11月1日、12月1日に連続刊行される第16回受賞作のヒロインたちも、独特の個性の持ち主たち。ここではその魅力の一端をご紹介したい。

　11月1日発売は、優秀賞と読者賞Ｗ受賞となる『魔法卿城の優しい嘘　銀の執事と緋の名前』。（和知杏佳:著、なな：イラスト）

　舞台は西洋風の世界。異国人の母を亡くし行き場のないジェーンは、魔法卿・コーネリアスの城でメイドをすることに。〈魔法使い〉という世界の異端を集め、悪名高い城で待っていたのは、剣も事務仕事も腕が立つ執事・ジョンだった。「彼女は不要です」――なぜかジョンは最初からジェーンを否定するが、ここで居場所を見つけるしかない。そんな中、彼女の“ある秘密”に関わる事件が起きて――!?

　ストーリーの巧みさや読ませる文章も評価された本作だが、読者審査員から寄せられたコメントには「暖かみがある」「ほっこりする」という言葉が多かった。それは孤独なジェーンが不安を抱えながらも、ジョンとの淡い恋や、異端とされる魔法卿城の人々との交流を通して居場所を見つける姿が、読む人の心に迫るからだろう。己の抱える“重大な秘密”にあらがい、それでも前向きに生きるヒロイン・ジェーン。優しい気持ちになりたい時に、お勧めしたい作品だ。

　本作はＷＥＢ上で予告コミックや、冒頭2章分の試し読みも公開されているので、ぜひチェックしてみて欲しい。

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　12月1日発売は、こちらも奨励賞と読者賞をＷ受賞した『剣影に誓う未熟な革命　令嬢だって騎士になりたい！』（夏樹りょう：著、おの秋人：イラスト）。

　主人公は、伝説の“剣影の騎士”に憧れ女人禁制の騎士を目指す男爵令嬢のリシュア。だが幼馴染みでお目付け役の騎士・ジュリアスには大反対されている。「どんなときでも、心だけは共にある」幼い頃そう約束を交わしたのに、騎士になると告げたときから冷たくなり、本心を明かさなくなったジュリアスに反発したリシュアは、怪しい事件に首をつっこみ大ピンチに!?

　ストーリーは夢に向かって努力するヒロインと、それを影から支えるヒーロー、という王道のラブ・ファンタジー。リシュアとジュリアス、そして彼女に急接近する謎の男・エドワードの活き活きとしたキャラクターに高い評価を得て受賞に至った。

　リシュアの思わず応援せずにはいられなくなるまっすぐさとともに、本作で心を掴まれるのは、その傍らで彼女を見守るジュリアスだろう。騎士団の隊長として無類の強さを誇りながら、家族同然のリシュアにも秘密のある“過去”を背負っている。

　真実を言えずに苦悩しながら、それでもリシュアを守ろうと剣を振るう彼の姿にはリシュアへの深い想いがにじみ出て、見ていて切なくなるほどだ。

　ジュリアスだけでなく、キャラクターそれぞれの複雑に絡み合った過去と現在が明らかになるどんでん返しにラストまで目が離せない。

　同じく12月1日発売で、奨励賞を受賞したのは『ローランシアの秘宝を継ぎし者　往け、世界はこの手の中に』。（橘むつみ：著、新井テル子：イラスト）

　本作は魔導結界＜アルス・マグナ＞により国交を断絶し続ける島国・ローランシアが舞台となる。この国では誰もが生まれながらに唯一の《まじない》を有する。五年前、そのカリスマ性で「ローランシアの秘宝」と呼ばれた国務大臣の父と母を殺されたアルメリアは、弟のティルザと二人、《まじない》を用い盗賊として隠れ潜んで生きてきた。だが忍び込んだ屋敷の主・イーディスに捕まってしまい、弟を人質に｢第一王子・アレクトを盗み出せ｣と命じられる。アルメリアは王宮に潜入するが、やがて自身の持つ《まじない》の意味と国を巡る陰謀、さらには五年前の事件の真実へと辿り着き――!?

　読者審査員からは圧倒的な世界観とキャラクター性、主人公の「前を向き進もうとする姿」のかっこよさが評価された。そしてアルメリアを翻弄し、突き放しながらも時に導くかのごとく振る舞う男・イーディス。アルメリアは彼と関わる中で、弟と二人の閉じた世界から踏み出していく。運命に翻弄されようとも立ち上がる。そんな力と清々しさをぜひ味わってほしい。

　12月発売の2作品も、試し読みなど順次公開予定！　期待してお待ち頂きたい。

　現在、さまざまな特典がもらえる『Happy　17th！　ビーンズ文庫　パースデーフェア』も開催中。受賞作は2ポイントがついているサービス仕様だ。

　冬の読書に女子向けエンタメの最前線を、体感してみてはいかがだろうか？