企画ボツからの大逆転！今夏話題のアニメ『彼方のアストラ』が歩んできた意外すぎる道のりとは？

　今年の夏クールアニメには、意外な道のりを経てアニメ化を掴んだ作品がある。『彼方のアストラ』だ。本作は、数々の漫画コンテストで高評価を獲得し、怒涛の勢いでアニメ放送を実現した今夏アニメの注目作品の１つだ。

　しかし、この作品はそんな好調ぶりからは考えられないようなどん底からスタートしているのはご存じだろうか。度重なる困難と逆境を乗り越え、圧倒的な評価を獲得するまでに至った『彼方のアストラ』の魅力やその道程を紹介したい。

■作者は累計販売部数1400万部を誇る『SKET DANCE』の篠原健太

　原作者は、2007～2011年に『週刊少年ジャンプ』で『SKET DANCE』を連載していた人気漫画家の篠原健太氏だ。同作は発行部数1000万部以上で、アニメ化もされている。

　そんな篠原氏は一体どんな内容になるのか？ 当時のファンや関係者の期待は大いに高まっていただろう。氏が選んだのは前作の学園コメディとは全く方向性が異なるSFモノだった。

　しかし当初、『彼方のアストラ』企画に下されたのは、意外にも低評価だった。直しのチャンスもなく企画自体が打ち切りの全ボツ…。さすがに篠原氏は企画を諦めかけたが、交渉の末に当時立ち上がったばかりのWeb漫画サービス「ジャンプ＋」で連載を獲得したという経緯を持つ。このように『彼方のアストラ』はどん底からスタートした作品なのだ。

■企画当初のアストラの主人公は、現在と全く異なる設定だった!?

　紙面ではなくWeb連載となり、キャラクター設定やストーリーは大きく修正されていった。その中でも主人公の変更点は大きい。

　当初の主人公はうじうじとした暗い感じの性格だったとか。そして物語もその主人公の成長物語を想定していたそうだが、Web漫画への切り替えに伴って生まれたのが、正義感に溢れる現在の主人公カナタ・ホシジマだ。また、合計49話、単行本にして5巻で完結を迎える内容と、全体のボリュームも凝縮されたのだ。

　そしてさらに困難は続く。実際にWebで連載が始まっても、反響はほとんど生まれなかったのだ。「このまま何もなく終わるんだろうな」と篠原氏は、後述するマンガ大賞2019での記者会見で当時をこのように振り返っている。

　しかし、洗練と凝縮を重ね、幾重にも張り巡らされた伏線によって、空気は一変していく。

■最終巻の売上はこれまでの2倍以上！ 壮大な伏線回収が話題に！

　単行本全5巻のうち、4巻まではほぼ横ばいの売り上げだった。だが、最終巻のコミック販売と共に状況は一変した。

　幾重にも張り巡らされた伏線が回収されていき、読者の想像を遥かに超えた最終巻は、SNSを中心に大きな反響を呼び、売上は2倍以上に伸びたのだ。

　作品の存在は瞬く間に各方面へ知られることとなり、数々の漫画コンテストでの高評価を獲得する。その中でも、Web漫画から史上初の大賞を受賞した「マンガ大賞2019」では大きな話題になった。

　篠原氏が困難に直面しながらも、研ぎ澄ませ続けた渾身の内容は、周りからの評価を180度変え、遂に今夏、アニメ放送が始まったのだ。

■困難を乗り越え熱狂を生んだ『彼方のアストラ』のストーリー

　舞台は宇宙へ行くことが当たり前になった近未来。惑星キャンプへと出発した9名の少年少女たちが突然謎の球体に飲み込まれ、遠い宇宙空間に放り出されてしまう。彼らは無事地球に戻ることが出来るのか？ 謎の球体の正体は？ 様々な謎や陰謀が渦巻くSFサバイバルストーリーだ。

■まだ間に合う！ 衝撃のラストをその目で確かめよう！

　苦難の連続の末に輝かしい評価を獲得した『彼方のアストラ』。アニメも原作同様に高く評価されている。「SF」「冒険」「サバイバル」といったジャンルが好きな人には特におすすめの作品だ。単行本は全5巻と、これまでの放送を見逃した人も追いつきやすいので、コミックもチェックしながら、衝撃のラストを見届けてはいかがだろうか？

文＝うすいよしき