恋が難病指定されたとしたら… BIGMAMAの金井政人による、初の短編小説

文芸・カルチャー

2019/8/9

 恋は病。突然ニヤニヤが止まらなくなったり、かと思えば、急に泣き出したくなったり。恋ほど、厄介なシロモノはない。特に、失恋した時は、その病からどうやって回復すれば良いのかわからない。それは、いくつになっても、多くの人の悩みの種なのではないか。ちょっと拗らせれば、何カ月、はてまた何年も引きずり続けてしまうことだって少なくはない。そんな恋という病に苦しんだ経験を持つすべての人に読んでほしい短編小説がある。

 日々更新される「お題」に対してユーザーが自由に「物語」を投稿していくストーリーエンタテインメントプラットフォーム「monogatary.com」に掲載されている『恋が“落ちる”ことについて』は、とある診療科を描いた物語。ロックとバイオリンを融合させた独自のメロディと特徴的な歌詞で人気のバンド・BIGMAMAのギターボーカル・金井政人による初めての小説作品だ。金井といえば、BIGMAMAの作詞作曲を手がける他、自身の楽曲を題材にした絵本や、詩集、エッセイ集なども発表している。元々のBIGMAMAファンからは、待望の小説発表に歓喜の声が上がっているが、BIGMAMAの音楽を聴いたことのない人でも、この作品の世界には魅了されてしまうに違いない。

『恋が“落ちる”ことについて』
https://monogatary.com/episode/33414

 歯止めの効かない少子高齢化、それに伴う出生率の低下。20XX年、政府は、最後の最後の最後の切り札として、恋を難病指定化している。とある病院の「恋愛科」で腕が良いと評判の医師と、診察にやってきた患者。「恋愛科」ではどんな診察が行われるのだろうか。この物語では、その様子にスポットライトを当てていく。

 どうして、こんなにもこの物語に惹きつけられてしまうのか。それは、金井の描く文章が、あまりにもありありと情景を想像させるからだろう。「恋愛科」の腕利き医師は、「いかにも人たらしな、ミルクやガムシロップみたいな顔」をして、「綿菓子のようなふわっとした声」で、患者の話を聴いていく。「柔らかい方のクッションに身を預けるように座」ると、患者は、気づいたら、辛かったはずのことも、リラックスして話すことができてしまう。そんな「恋愛科」の風景が描写されるにつれて、まるで、自分が「恋愛科」を訪れたような気にさせられる。数分で読めてしまう短編であるのにも関わらず、その世界に吸い込まれていく自分に気づく。

 治療として医師は何を提案するのだろう。医師が診察していく姿を見ると、なんだか自分の恋にも答えが見つけられるような気がしてくるのだ。『恋「に」落ちることについて』ではなく、『恋「が」落ちることについて』というタイトルであることもポイント。恋という難病を治す方法を見出せるような気がしてくるのだ。金井氏の小説になんだか勇気づけられるような心持ちがしてくるのは、きっと私だけではないはずだ。

「誰1人同じ人間がいないように、処方箋にも同じものはないのですよ」
「大事なのは、自分自身で答えを見つけることなんです」

 現在、「monogatary.com」では、「モノコン2019」というコンテストを実施中。お題ごとに11個の賞が設けられ、「物語」や「挿絵」を募集している。中でも、「金井政人賞」では、この彼の描いた短編小説『恋が“落ちる”ことについて』を元としたイラストやデザインを募集中だ。大賞に選ばれると、作品がグッズ化されるというから、音楽好きや小説好きだけでなく、イラスト好きもこの物語に触れてみてほしい。読めばすぐに想像力を掻き立てられるに違いない。恋に悩んだことがあるすべての人に響く作品。今すぐにでも読んで、あなたのイマジネーションを膨らませてみてほしい。

文=アサトーミナミ

■「モノコン2019」
https://monocon2019.com/