マンガ『宇宙兄弟』の持ち味は映画にとってマイナスだった!?

マンガ

公開日:2012/5/13

 マンガの実写映画化は、実はハードルが高い。特に10巻を超えるような長編マンガの場合、それを2時間で描くのは簡単ではない。
 また、原作の“絵”があるだけに、「(役者が)似ていない!」と反発を受けやすい。一方で、原作をなぞるだけではストーリはーすでに知られているので、刺激や感動は生まれない。  

 これらの難しさに加えて、映画『宇宙兄弟』は、原作マンガの持ち味が映画作りには逆に足かせだった。
1つは、主人公の兄・六太を筆頭にキャラクターの心の動きや思考が面白味となっている部分。マンガでは内面は活字で描写され数々の名シーンを生んでいるが、映像では役者が演技で表現しなければならない。2つ目は、兄は日本(地球)にいて、弟・日々人はアメリカ(あるいは月)と物理的な距離がある点。

 映画で主演の2人(兄・小栗旬、弟・岡田将生)を絡ませられないのは、つらいところ。
「2人をいかに近くにいるように見せるか」(森義隆監督、以下同)が演出の大きなポイントだった。「兄弟としてのバックボーンを埋めるため」、監督は、主演の2人に兄弟に関する議論や即興芝居を何度も重ねてもらった。岡田が小栗の家に遊びに行き、同じ時間を過ごしたりもしたとか。
 劇中で2人が一緒に映るのは、わずか5シーン。だが、それが気にならないほど兄弟は互いにとって近くにいる。2人の絆が際立つ、映画版『宇宙兄弟』の演出に注目してほしい。

文=平山ゆりの/日経エンタテインメント!
(ダ・ヴィンチ6月号 「出版ニュースクリップ」より)

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