マンガやCMに登場する「食べ物シーン」に潜む「なぜ」を徹底分析

エンタメ

2012/5/17

 『お菓子と果物の手帖』、『フードラッピング』、『フレーバーウォーター』など、おいしくてロマンティックなレシピ本を多数発表し、マンガにも造詣が深く、マンガにちなんだお菓子のレシピとマンガ家との対談を収録した著書『まんがキッチン』が大きな話題になった福田里香さんが、物語に登場する「食べ物」に潜む「なぜ」を楽しく徹底分析した。

 
 マンガや映画、CMなどに似た形でたびたび登場し、多くの人にいつの間にか共有されているフード表現を「ステレオタイプフード」と名付け、50個挙げて検証。

 独自の“フード理論”三原則
(1 善人は、フードをおいしそうに食べる
2 正体不明者は、フードを食べない
3 悪人は、フードを粗末に扱う)
をもとに様々なシーンを読み解いていくエッセイだ。

 福田さんがすごいのは、ステレオタイプフードを「あるある」で片付けず、それが「なぜ」繰り返されるのか、どういう意味があるのか、一歩奥に踏み込んで語っていること。
「この場合は、具体名を覚えたり調べたりするよりも、『なぜ』かを考えて分析することのほうが大切だと思うんです」。

 例えば、朝「遅刻、遅刻…」と呟きながら少女が食パンをくわえて走ると、転校生のアイツとドンッとぶつかり恋が芽生える、といった「食パン少女」シーンをフード理論で読み解くとこうなる。

 食パンは「この娘はまだ恋を知らない」(=色気より食い気)というアイコンであり、少年とぶつかった瞬間、口からパンを落とすことで、恋を知る。乙女になった彼女は、もう食パンをくわえて走ることはない…。

 今までそんなふうに考えたことなかった!と新鮮な驚きがありつつ、すっと腑に落ちるような爽快な解説が、時に理路整然と、時に妄想たっぷり思い入れたっぷりに続いていく。

 「あるある」と笑い、「なるほど」と納得しながら楽しく読み終えたら、今度は自分でも映画やマンガのなかのフード表現をチェックしたくなってくるはず。さらには、今までなんの気なしにつきあってきた周りにある「食」がちょっと違った色合いを持って見えてくるかもしれない。

取材・文=門倉紫麻
(ダ・ヴィンチ6月号 今月のブックマーク「『ゴロツキはいつも食卓を襲う』 福田里香/著 、オノ・ナツメ/挿画」より)