森博嗣 新作『ブラッド・スクーパ』 最初の構想は「とにかくメッタ斬り」

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/27

森博嗣の〈剣豪小説〉第2弾『ブラッド・スクーパ』が出た。剣の達人・ゼンが世界の未知なるものと出会いながら旅をしていくシリーズで、昨年4月に刊行された『ヴォイド・シェイパ』の続編となる。

「最初は『バンブー・ストーン Bamboo Stone』というタイトルで、それしか決めていなかったんです。バンブーという響きがよかったので〈竹の石〉という言葉を置いてみた。じゃあ竹の石って何かな、と。そういう順番で考えていった。執筆の途中で、現在のタイトルを思いついて変更しました」

竹の節の中にできる不思議な石を巡る騒動にゼンは巻き込まれる。題材として竹を選んだのは、もっとも東洋的な感じがする言葉だったからだ。本シリーズは「外国から見た日本」のイメージを基調にして書かれているのである。
「最初に地名とかしきたりなどの小道具を提示して、日本の古い文化を説明するのが普通のやり方だと思いますが、このシリーズはそういう具体的なものを一切使わないで抽象的に書こうと考えています。今の若い人たちは外国人みたいなもので日本の昔のことなんておそらくほとんど知らないでしょう。そういう人に小道具を見せても意味がないですよね。それよりも作品に流れる雰囲気で“和”の空気を感じてもらえれば」

この作品では、過去の日本がファンタジーの世界に見立てられている。現代のファンタジーはヨーロッパ的な風物を中心として構築されているが、そうした要素は出てこない、和のエッセンスのみが存在する世界だ。抽象によって本質的なものだけを浮かび上がらせようとする試みは、非常に興味深い。

前作『ヴォイド・シェイパ』は、山を下りたばかりのゼンがいろいろな人との出会いを体験するという連作短編のような構成だった。今回のゼンは〈竹の石〉をめぐる争いごとに巻き込まれ、しばらく一箇所に留まることになる。

本作構想の最初にあったのは、実に単純なことだったという。

「とにかくメッタ斬りをしようと。雨の中でゼンが何人も殺すシーンを書こうと思いました。40人くらいは斬ろうと考えていたのですが、そんなには斬れなかった。1人でそれだけ斬りまくっていたら、相手だって何か策を考えますよね(笑)」
実際のクライマックスがどのようなものになったかは、読んでのお楽しみ。

取材・文=杉江松恋
(ダ・ヴィンチ6月号「『ブラッド・スクーパ―The Blood Scooper森博嗣」より)