芥川賞作家・長嶋有 新作で漫画に挑戦

アニメ・マンガ

2012/5/23

 別名義・ブルボン小林で漫画評を連載したり、漫画賞の審査員を務めたりと漫画への造詣が深い芥川賞作家・長嶋有。漫画愛溢れる彼が挑んだのは「漫画編集者」として、さらには「漫画家」として、自分で漫画を作ること。2年以上かけて取り組んだ2作品が、ついに完成した。

 
 「2冊完成して、夏休みが終わったような虚脱感がある。ずっと楽しかったから」。長嶋有の新作『長嶋有漫画化計画』と『フキンシンちゃん』は小説ではない。漫画だ。『長嶋有漫画化計画』では、長嶋有の小説を漫画家15人がコミカライズ(10作は『小説宝石』で連載、描き下ろし5作)。長嶋さんはこの企画の単なる「原作者」ではない。

 出版社に企画を売り込むところから始め、萩尾望都ら漫画家を口説き、打ち合わせもネームのチェックも、時には原稿を受け取りにも行った。つまり連載開始から本ができあがるまでの2年半、長嶋さんは「編集者」として、漫画化に関わり続けたのだ。
 「先は見えないながらもうまくいくっていう楽観性だけはなぜかあって。参加してくれた漫画家さん側にもそれがあった気がするなあ。『長嶋があんなにやる気なんだから大丈夫だろ』って。でも『手を抜けないぞ』と思って、全員ガチンコで描いてくれた。何人かの漫画家さんは、明らかにその人の新しい面が作品に出た気がしますね」

 長嶋さんが引き出した15人の全力がつまったこの本の熱量は凄まじい。どの作品もその人らしく、かつ長嶋有の小説の魅力を改めて十全に伝えている。

 「僕の小説って総じて『静かな日常を描く作風で』とかよく言われるんだけど、自分では、毎回違う、おもしろいことをやってるのに!と思っていて。これだけいろいろな人に漫画にしてもらえば、それが読者にも伝わるだろうと。ずっと楽観的でいられたのは、自分の小説のおもしろさに自信があったからだといま気づきました(笑)」

 今後、小説を書くうえで、漫画と取り組んだこの経験はどんな意味を持っていくのだろう。
「まだわからないけど『ズッコケ』とか『芸能人に似せる』とか漫画にしかできないことがあるとわかったから、逆に小説でやるべきだと思うことが出てくるのかも。いや…むしろカッコ書きで(マイケル・ジャクソンにそっくり)とか書くようになるかもしれないな(笑)」

取材・文=門倉紫麻
(ダ・ヴィンチ6月号「『フキンシンちゃん』、『長嶋有漫画化計画』 長嶋有」より)