福田麻由子、「50歳まで『未来日記』は欲しくない」

芸能

2012/6/9

今から3年ほど前。福田さんは、それまで当たり前だと感じていた世の理や現実に対して、“実はそうじゃないのかも……”という不安に駆られていた頭に浮かぶ、答えなき問題に押し潰されそうになっていた日々。
「毎日ここから抜け出したいと思っていて。でも、ここというのがどこなのかも分からなくて。今いる場所なのか、それとも自分の気持ちのことなのか。そんな時、この本に出会いました」 

 生後すぐにコインロッカーに捨てられたキクとハシの物語。彼らは小さな箱から生き延び、やがて社会と対峙していく。

 「でも結局、私たちはどこまで行っても世界という大きな場所に閉じ込められているんですよね。そこから抜け出すことはできないけど、それでも叫び続けなくちゃいけない。そのことが、当時のモヤっとした私の心にリンクして、衝撃を受けたんです」

 今でも何度も読み直す大切な一冊。自分の言動に嘘がないか……。そんな気持ちになった時、「怖がらず、もっと自分から動き出さなくちゃいけないっていう刺激をもらえる」のだという。

 「村上さんの作品にはいつも心を揺さぶられます。あくまで人間の心を描いているのに、文体が無機質なところが大好きなんです。それに加えて、この作品はダントツに文章が美しい。本を開いてすぐ、“あ、これは早く読まなきゃ”っていう衝動に駆られたのをよく覚えてます」

 一秒でも早く先を知りたい。しかし、未来を知るのは楽しいことばかりではないはずだ。現在彼女が出演中のドラマ『未来日記』では、登場人物たちが未来の出来事を記すスマートフォンを手にしたがために、人生を賭けたサバイバルレースに巻き込まれてしまう。

 「原作が本当に面白いんです。ドラマではそこにオリジナルストーリーが加わり、また違った楽しさがあります。ちょうど今は、これまで謎だった部分が徐々に明らかになったり、一度姿を消した人たちまで復活を遂げたりして、ホント、息もつかせない展開が続いていますね」

 放送もそろそろ佳境。しかし、ラストについては本人たちも知らされていない。「だから、どうなるんだろうっていうワクワク感は視聴者の皆さんと同じ」と笑う。また共演者とも仲がよく、撮影現場では、“もし、このケータイがあったら……”なんて話も。

 「よくしますね。でも、私は絶対にいらないです。未来が分からずにもがく苦しみって、いつか楽しい思い出になると思うし、それに未来にいいことがあるって分かっちゃうと、今を頑張れなくなる気がして。だから手に入るにしても、私は50歳ぐらいになってからでいいです(笑)」

■福田麻由子さんが選んだ一冊
新装版 コインロッカー・ベイビーズ』 村上 龍 講談社文庫 920円
生後すぐ、母親にコインロッカーに捨てられたキクとハシ。乳児院で育ったのち、二人は九州の離島にある家に養子に入り、思春期を過ごす。やがて母親を探しに消えたハシ。彼を追いキクは廃墟と化した東京へと向かう。退廃的なエネルギーで世界を描き、そして打ち砕く、村上龍の代表作にして、近未来小説の金字塔。

取材・文=倉田モトキ
(ダ・ヴィンチ7月号「あの人と本の話」より)