インパルス板倉が品川祐に薦められて興奮した本とは?

芸能

公開日:2012/6/11

「“この本絶対、お前、好きだわ!”と品川祐さんに薦められ、一気に読んだのが2カ月前。今もまだ興奮状態なんです」
 壮大な仮想空間が創り出すスケール感に“こんな小説、読んだことない!”と、板倉さんが、今もその熱に浮かされているのは、昨年3月の刊行から出版界を騒然とさせ続けている高野和明の『ジェノサイド』。 

 「父の遺志を継ぐ創薬化学を専攻する大学院生と、暗殺任務と思しき正体不明の作戦に挑む傭兵、2人の視点で進みゆくストーリーで、特にのめり込んだのは、特殊部隊出身の傭兵・イエーガー視点の場面。もともと軍事ものが大好きなので“私はフォース・リーコンにいた”なんていう登場人物のセリフにも“ああ、あそこにいたんだ!”って、スッと入っていけた」

 作中、怒涛のように繰り出される国際情勢、薬学、軍事、最先端の通信技術など、多岐にわたる分野の専門的記述は、読者に情報のシャワーを浴びせ続ける。

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 「さまざまな知識欲を刺激されますよね。でも遺伝子の構造についてはなかなか理解できず、立ち止まっては繰り返し読んでいました。あきらめて飛ばし読みしてしまったら、作品のリアリティを拒否することになってしまうから。そうした知識の上に構築された人類の進化に関する推理は、“もしかしたら、これが真実かも……”と、驚きとともに納得させられましたね」

 そのエンターテインメント性の高さを激賞する板倉さんだが、自身が小説デビュー作『トリガー』から3年を経て上梓した『蟻地獄』も次々トラップが炸裂する本格エンターテインメント。翻弄される主人公のリアルな視点と緻密な設定が読者を作品世界に引きずり込む。

 「前作は初めてということもあってよくわからず、視点を次々と切り替えていったのですが、今回は一人称で書こうと決めたんです。描写が限定されるため苦労はしましたが、ずっと主人公と伴走できたようで、彼のことがどんどん好きになった。パチンコ屋に入り浸っているようなダメなヤツですが(笑)、実は誰よりもまともで頭もいいし、内面にあるあったかいものもストーリーの中でうまく引き出せたように思います」
 
 19歳という彼の年齢設定も語りをハジけたものにしたり、時には硬質な言葉でピリッとしめたりと表現の自由度を広げたという。丹念に磨きをかけた文章には“芸人・板倉俊之”ならではのツッコミや洒落のきいた言い回しが随所に光る。

 「書けば、書くほど小説は奥が深いし、途方もなく自由。設定はリアルだけど、フィクションならではのぶっとんだ展開をぜひ楽しんでいただきたいです」

■板倉俊之さん(インパルス)が選んだ一冊
ジェノサイド』 高野和明 角川書店 1890円
急死したはずの父からメールを受け取った大学院生・研人と、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、不可解な依頼を引き受けた傭兵・イエーガー。交わるはずのない2人の人生が交錯した時、米国の情報機関が極秘に察知した“人類絶滅の危機”が明らかに! 圧倒的な読みごたえの、まさに“読むハリウッド映画”。

取材・文=河村道子
(ダ・ヴィンチ7月号「あの人と本の話」より)