オウム 高橋克也の“愛読書”が話題

社会

公開日:2012/6/26

 先日、逮捕されたオウム真理教元信者の高橋克也の“愛読書”に注目が集まっている。
逃走中のキャリーバッグから麻原彰晃の著書が見つかり、潜伏生活を送っていた社員寮の部屋にも、30冊ほどの本が遺されていたという。

アメリカのニューエイジ運動にも影響をあたえた人類学者、カルロス・カスタネダの『呪術の体験―分離したリアリティ』『夢見の技法―超意識への飛翔』といった本に加え、会社の同僚はマンガ『JIN-仁-』全20巻を譲り受けたことがあるそう。また、「防犯カメラの性能を解説する専門雑誌や小説」などが見つかっているらしい。

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 防犯カメラの小説……。ここで気になるのは村上春樹の『1Q84』だ。作中では牛河が隠しカメラで監視する場面もあるが、それだけではない。『1Q84』で大きな鍵となるカルト教団「さきがけ」は、オウム真理教がモデルと言われているからだ。実際、村上春樹自身も、執筆のきっかけを「オウム裁判の傍聴に10年以上通い、死刑囚になった元信者の心境を想像し続けた。それが作品の出発点になった」と読売新聞のインタビューで語っている。

 これまでも、『アンダーグラウンド』では地下鉄サリン事件の関係者を、『約束された場所で』ではオウムの信者、元信者を取材したノンフィクションを執筆してきた村上春樹。「(オウム事件は)現代社会における“倫理”とは何かという、大きな問題をわれわれに突きつけた」(インタビューより)と語るように、オウム事件を“カルト教団による宗教テロ”と捉えるのは、一面的といえるだろう。

 『1Q84』の文庫版が完結し、オウムもすべての逃亡犯が逮捕されたいま。日本という社会のシステムについて考えるきっかけとして、『1Q84』を読み返してみるのもいいかもしれない。

(ダ・ヴィンチ電子ナビ)