本来の意味を知ってる?「おもむろに」「やおら」「失笑する」

文芸・カルチャー

公開日:2020/12/24

本来の意味知ってる?「おもむろに」「やおら」「失笑する」

 日本語には様々な熟語や慣用表現がありますが、全ての意味を正確に覚えるのは至難の業。今回の記事では“誤用”しがちな言葉を3つピックアップして紹介します。いざという時に恥をかかないように、正しい意味を確認していきましょう。

逆の意味で定着しつつある「おもむろに」

 小説などでよく見かける「おもむろに」という言葉。「おもむろに動き出す」や「おもむろに席を立った」といった使い方をされていますが、正しい意味をあなたはご存知ですか?

『大辞林』第三版によると「落ち着いて、ゆっくりと事を始めるさま」というのが本来の用法。しかし文化庁が行った平成26年度「国語に関する世論調査」の結果を見てみると、この用法を理解していた人は44.5%という結果になっていました。

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 それに対して40.8%の人が誤用とされる「不意に」という回答を選択。本来の意味を知って驚く人も多いようで、ネット上では「“いきなり何かをし始める”って意味だとずっと思ってた」「『おもむろに』って語感にゆっくりしたイメージが全然ないし、誤用されるのも仕方ないかも」といった声が上がっています。

意味がわからない人も?「やおら」の誤用

「おもむろに」とほとんど同じ使い方をされる言葉に「やおら」があります。こちらも正しい用法は「ゆっくりと」ですが、「急に、いきなり」という意味で誤用されるケースが多いようす。

 平成29年度「国語に関する世論調査」の結果を見てみると、「やおら」について誤った意味で覚えていた人は全体の30.9%。正答である「ゆっくりと」を選んだ人は39.8%で、言葉の意味が「わからない」と答えた人の割合も23.5%と高かったようです。

「おもむろに」や「やおら」が誤用される理由については、“いきなり”という意味の「やにわに」と混同されているという説も。SNS上では「どれも語感が近いから紛らわしい」「『やおら』と『やにわに』、『おもむろに』をいつも間違えてしまう」と悩む声も見られました。

実はポジティブな意味だった「失笑する」

 面と向かって「あなたの発言に失笑した」などと言われたら、馬鹿にされているように感じる人も多いでしょう。しかし「失笑」とは本来、悪い意味で使われる言葉ではないようです。

 平成23年度「国語に関する世論調査」によると、「失笑する」の正しい意味は「こらえ切れず吹き出して笑う」というもの。ただ、これを理解していた人は27.7%と全体の約3割しかいませんでした。

 過半数に及ぶ60.4%の人は、「笑いも出ないくらいあきれる」という悪口のような表現として理解している模様。実際にSNSなどでも「字面だけ見たら呆れるって意味の方がふさわしい」「絶対通じないから正しい意味で使うことはないだろうな」といった意見が上がっています。

 言葉の色々なニュアンスを知っておけば、それだけ相手の言いたいことを察しやすくなるはず。コミュニケーション能力を上げるためにも、国語力アップを目指していきましょう。