注目の美術家が創る、まったく新しいスタイルの「ジョジョ」

マンガ

更新日:2012/7/11

 auのデザインプロジェクト「iida」や、「ゆず」のPVやステージセットなどで知られ、今もっとも注目されている現代美術家の名和晃平。『ダ・ヴィンチ』8月号誌上にて人気マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズとコラボレートし、登場キャラクターのジャイロ・ツェペリの彫刻をつくりあげた。

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 その工程は、実存するフィギュアをCCDカメラで撮影・処理して3次元形状をデジタル情報化するというまったく新しいスタイル。ただし、専用装置を使った作業自体は、実際に彫刻を彫るのと同じ丹念な手作業だ。
「ジャイロ・ツェペリの回転の力をイメージしました。ジャイロ自身をエネルギー体として表現すると、こういう感じになると思う。ちょうど3Dエフェクトを開発していたので、その技術を生かした初の作品になります」

 作品では偶然出てくる形を狙うのだという。まず何十通りも造り、その中から二つの方向性に絞り込み、そこからさらに10体ほど造り、また二つに絞り込む。そうした工程を繰り返すことによって偶然できた形を洗練させていくのだ。
「作品では素材の質感にこだわっていますが、今回はあえて質感ができるだけないニュートラルな素材を選びました。3D作品の場合は、情報の状態で一旦完成。それをどの素材で造ったとしても作品の本質はデジタルデータにあって、現実化されたものは仮の姿なんです」
 まさにデジタル時代の彫刻だ。

 「ジョジョの奇妙な冒険」は思春期の頃からファンだったという。
「荒木さんの絵は、すごく身体的で、それがトランスフォームして人間という存在の輪郭を崩してくる。造形的にすごくフェティッシュですよね。他のマンガとはどこか違って見えた。空間の歪ませ方も独特で、読者のイマジネーションを利用して時間や空間をジャンプしたり、リンクさせたりする」

 同誌では、名和氏のほかにもアーティスト・清川あさみ、書道家・武田双雲とコラボレートした、誌面でしかお目にかかれない作品を堂々掲載している。

取材・文=大寺 明
(『ダ・ヴィンチ』8月号「『ジョジョの奇妙な冒険』連載25周年 JOJO=JAPAN」特集より)