実戦も可能!? “平成の武人”に「ジョジョ」バトルを訊く

マンガ

更新日:2012/7/12

 『ジョジョの奇妙な冒険』の第1部、第2部では、圧倒的な力を持つ強者に対し、“波紋法”という古の体術で対抗する。その格闘術は、シリーズ全体を貫くテーマ“人間賛歌”の原点だ。古武道と波紋法──両者には数多くの共通点があるという。『ダ・ヴィンチ』8月号では、平成の武人・無也斎鬼一という異名を持つ東京理科大学の白石安男教授(柳生心眼流免許皆伝)に「波紋法」について訊いている。

advertisement

 「波紋法は、中国の気功に似ていますよね。中国拳法の太極拳も気功と同種のもので、私も高校生の頃、当時北区滝野川にあった中国拳法道場で太極拳を習いました。中でも『站樁(たんとう)』というのが神秘的です。立った状態で気を練るイメージをすると、身体に気が充満してくるのが感じられてくるんです」

 太極拳というと、ゆっくり踊りを舞うような印象があるが、本来の太極拳は、打撃のときに瞬間的なインパクトで技を繰り出す。一定のリズムで呼吸を練り、一挙に生命エネルギーを放出する波紋法にちょっと似ている。

 これと似た瞬間的な打撃技を白石教授は披露してくれた。相手のみぞおちに手の甲を当て、瞬間的に力を入れて拳をねじり込むのだ。身体がふっ飛ぶような派手さはないが、内臓に衝撃を与え、相手はたまらず悶絶。白石教授の師であった武道家・高橋華王が伝えた“秘伝”の技とのこと。

 「ねじることで面から点の衝撃に変わります。西洋の物理学的発想では、“1/2×質量×スピードの2乗”が運動エネルギーです。スピードを速くするためには間合いが必要となりますが、この技は違う。中国拳法の達人であった格闘技俳優のブルース・リーがこれに似た寸勁(すんけい)という技を米国で披露したとき、オリエンタルミラクルだ! と皆が驚いたそうです」
 
 その他にも、白石教授は“波紋法”が説く呼吸やルーツについての比較を行い、「非常によくできた武術」と賞賛している。

 白石教授のお墨付きをもらった波紋法。「ジョジョ」バトルの底流には東洋古武術のルーツがあるのだ。

取材・文=大寺 明
(『ダ・ヴィンチ』8月号「『ジョジョの奇妙な冒険』連載25周年 JOJO=JAPAN」特集より)