新人でいきなり直木賞にノミネート 宮内悠介って何者?

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/26

 いよいよ選考会を今夜に控えた第147回の直木賞。
そんな直木賞に今回、デビュー作でノミネートされた異例づくしの新人作家がいる。それが宮内悠介だ。

早稲田大学出身の彼は在学中ワセダミステリクラブに所属し、卒業後もワセダミステリクラブOBとして創作を続けていた。幼い頃をニューヨークで過ごし、大学卒業後はインドやアフガニスタンを放浪した後に麻雀のプロを目指したこともあり、その経験が今回の『盤上の夜』(東京創元社)に活かされている。

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1人のジャーナリストの目を通して描かれるこの作品は、囲碁やチェッカー、将棋、麻雀、将棋やチェスの起源となったといわれる古代インドのチャトランガなど、様々なボードゲームを題材にした一風変わった連作短編集となっている。

表題作の『盤上の夜』は、手足を失ったが囲碁盤をまるで自分の手足のように“感じる”ことができる天才女性棋士・灰原由宇と彼女を支える元プロ棋士・相田淳一の話だ。対戦の緊迫した描写には、まるで自分が戦っているのかと思えるほどに引き込まれる。

この作品が注目を集めているのは、金城一紀の『GO』以来となるデビュー作でのノミネートだからというだけではない。これがSF作品だから彼への注目はさらに高まっているのだ。なぜなら直木賞でSF作品がノミネートされることは珍しく、受賞を果たしたこともほとんどない。

万城目学の『鹿男あをによし』(幻冬舎)がノミネートされたときも、選考委員の渡辺淳一は「鹿がしゃべるなんて」と、全く理解できなかったようだ。選評でも「鹿との会話は安易すぎる」とコメントしており、彼にSF作品の良さを理解してもらうのは大変かもしれない。

そんな渡辺が『盤上の夜』にはどんな選評をつけるのか? そのコメントにも注目だ。

また、今回は山本周五郎賞とのダブル受賞が期待される原田マハや受賞すると男性では史上最年少で初の平成生まれとなる朝井リョウなど、数々の強敵も立ちはだかる。

宮内悠介はそれらに打ち勝ち、SF作品初の直木賞という快挙を達成できるのか? 今夜の発表が楽しみだ。