すべり芸人・ふかわりょう、意外な文才を披露

芸能

公開日:2012/7/22

 “すべり芸”がすっかり板についた芸人・ふかわりょう。現在は新たな活動として『5時に夢中!』で司会を務めているが、進行役よりも(?)もっと才能を発揮している分野がある。

 それがよくわかるのが、現在発売中の『文學界』8月号(文藝春秋)。この歴史ある由緒正しい純文学系文芸誌で、「美しさにまつわる」という題名のエッセイを発表しているのだ。
 気になるエッセイの内容は、題名の通り“美しさ”について。ムンクの「叫び」が売却されるというニュースからはじまり、美しさの本来的な価値が、数量や貴重さ、頻度などの付加価値に誤魔化されてしまうことを論考。さらに、「美しさ。それは、日常にこそ存在するもの。長い間戦争に赴き、数年ぶりに手にしたおにぎりは格別のはず。」と、日常のなかにある奇跡に美しさを見出している。

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 「地球の取っ手のような大地に両足をつけた大きな虹」など、普通なら気にならないのに「ふかわりょうが書いた」と思うと少し恥ずかしくなってしまう比喩もあったりはするが、そこはご愛嬌(!?)。話題の運び方や文体のリズムなど、細やかな部分も意識して書かれていることが伝わってくるエッセイだ。また、今年3月に発売されたアイスランド旅行記『風とマシュマロの国』(幻戯書房)でも、その文才を披露。直球の紀行エッセイとなっている。

 芸人という“笑わせる”立ち位置を意識することなく、臆面もなく美しさについて綴ることができるというのは、ある意味、貴重な資質。“すべり芸”ではなく、彼の根にある素の部分なのだろう。数年前には品川ヒロシを筆頭に芸人小説のジャンルが賑わせたが、もしかすると真打ちはふかわりょう……かもしれない。