なぜ「本屋大賞」のヒロインは宮崎あおいなのか?

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更新日:2014/3/28

 先日、50万部を超えるベストセラー小説『舟を編む』(三浦しをん/光文社)が、松田龍平宮崎あおい主演で映画化されることが発表された。このニュースを受けて気になること。それは“本屋大賞受賞作の映画ヒロインは、どうして宮崎あおいなのか?”ということだ。

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 9月に封切られる『天地明察』(冲方 丁/角川書店)は第7回で大賞に選ばれ、昨年公開された『神様のカルテ』(夏川草介/小学館)は同じく第7回で第2位にランクイン。『舟を編む』は第9回大賞作品だ。これらすべての映画で、宮崎あおいがヒロイン役を演じているのである。

 いまや国民的な映画女優である宮崎。一方で本屋大賞は、“売り場からベストセラーをつくること”を目的に、書店員によって設立された賞。「多くの人に愛される」という点で、本屋大賞に選ばれる作品と宮崎の存在は、必然的に相性がいいのかもしれない。逆にいえば、「宮崎あおいが演じそうなキャラが登場すれば、本屋大賞を獲れる」という法則もあり得るのではないか……。そこで、この方程式を基に次の本屋大賞を占ってみたい。

 次回の本屋大賞の対象作品は、2011年12月1日~2012年11月30日に刊行された小説だ。現時点で考えれば、今年いちばんの話題作『楽園のカンヴァス』(原田マハ/新潮社)はかなり有力。この小説の女性登場人物としては、主人公の学芸員ティム・ブラウンのライバルとして、日本人研究者・早川織絵が登場する。ただ、『天地明察』『神様のカルテ』『舟を編む』で宮崎が演じる人物は、物語の本筋に直接関わらないヒロイン役ばかり。織絵はほとんど主役に近いので、法則からは少しズレてしまうかもしれない。

 次に、『博士の愛した数式』(新潮社)で第1回に大賞を受賞し、ノミネート常連作家である小川洋子の『最果てアーケード』(講談社)はどうだろうか。この作品は、風変わりな品物を扱う店が軒を連ねる世界1小さなアーケードを舞台にした連作短編集。物語の語り手で、アーケードの大家の娘で配達係も務める「わたし」は宮崎の雰囲気にもピッタリだ。さらにマンガ原作として描かれた物語なので、映像化もしやすいように思われるが……。

 続いて、「きみはいい子応援会」なるものまで結成され、書店員さんたちの熱烈な応援で売り上げを5万部まで伸ばしている注目作『きみはいい子』(中脇初枝/ポプラ社)も、本屋大賞にノミネートされる可能性が濃厚な作品だ。こちらは児童虐待をテーマにした連作短編集で、学級崩壊するクラスの男性教師や娘に手をあげてしまう母親、かつて自分を虐待した母親を預かることになった娘などが登場する。宮崎あおいが演じる教師役やママ役……観てはみたいが、あまりイメージが湧かないかもしれない。

 本命として挙げたいのは、『太陽は動かない』(吉田修一/幻冬舎)だ。物語は、表向きはニュース通信社だが、その裏で産業スパイである会社で働く情報部員・鷹野とその部下・田岡を主人公にしたスパイ・アクションだが、同僚ではあるがスパイ業務のことは知らない女性記者の青木優役は、まさにこれまでの“本筋に直接関わらないヒロイン”という意味で最有力。謎の美女・AYAKO役でも、アルマーニの広告で見せたクールビューティな一面を発揮できるかも?

 いささかアクロバティックな独断でお送りした、この予測。次回の本屋大賞発表は来年とまだ時間があるが、11月末まで発売される小説は「このキャラは宮崎あおい的?」という視点で読んでみるのも一興だ。