人気の秘密はディープな魔術考証? 『レンタルマギカ』ついに完結

マンガ

更新日:2012/7/31

 『とある魔術の禁書目録』(鎌池和馬、近木野中哉、はいむらきよたか/スクウェア・エニックス)や『魔法科高校の劣等生』(佐島 勤、石田可奈/アスキーメディアワークス)など、魔術が登場するマンガやラノベ作品は数多くある。時代ものや医療ものなら専門家並みの知識が必要そうだが、魔法や魔術なら“なんでもあり”でいいんじゃないの、と思っている人もいるかもしれない。そんな中、魔術に関してわざわざ考証家をつけている作品がある。それが『レンタルマギカ』(三田 誠、pako/角川書店)だ。

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 主人公の伊庭(いば)いつきは、失踪した父のかわりに魔法使い派遣会社「アストラル」の社長になった。ここにはケルト魔術から神道、陰陽道に至るまで、さまざまな魔術を扱う人材が揃っている。また、ライバル会社でもある魔術結社「ゲーティア」では古代ソロモンの魔術を使ってソロモンの72柱を召喚するので、この作品ではあらゆる魔術の知識が必要になるのだ。

 そこで活躍するのが、魔術考証家の三輪清宗(みわきよむね)である。三輪はもともとゲームデザイナーなのだが、オカルト好きが高じて『レンタルマギカ』の魔術考証や『Fate』のゲール語監修などを務めている。常に黒いコートにステッキという出で立ちで現れる謎の人物だが、魔術に詳しく「世界に十数冊しかない魔術書を持っている」といわれるほど。また神主の資格も持っているといわれ、あらゆる魔術に精通しているということは間違いない。

 そんな彼が物語で使う魔術の提案やアドバイスを行い、物語を深める手助けをしているのだから他の作品とは一味違う。ケルト魔術や陰陽道などの実在する魔術を扱っているので、作中には神道の技術の基礎とされる「振魂」(ふりたま、ふるたま)や少林寺拳法などにも用いられる「震脚」(しんきゃく)など、その魔術に関連した技も登場する。ケルト魔術や陰陽道を扱う作品はあれど、その技に至るまで活用している作品は多くない。

 また、『レンタルマギカ』では異なるジャンルの魔術が登場するため、その威力、防御の強さ、詠唱の速さ、その魔術を使ったときの対価、その魔術を使うための技術や危険度の6つの面から数値化しているのも特徴。相性のいい魔術や自分の魔術で相殺できるものなども細かく設定されているので、全く異なる魔術同士でも比較することができ、バトルシーンの描写にも説得力が増すのだ。さらに、術に失敗したときには相応のリスクがあったりと、単なる空想バトルよりも現実的な気にさせる。これも三輪の魔術考証あってこそのこと。

 そんな『レンタルマギカ』の最終巻『レンタルマギカ 最後の魔法使いたち』が、7月31日に発売された。2004年から続いた魔術バトル。その決着は……?