第2回『ケンタッキーラーメンを作る』後編

更新日:2013/8/6

沢山ケンタッキーフライドチキンを食べた後
ファミマでチキンを食べる僕

『ケンタッキーラーメンを作る』後編

「無性に食べたくなる」
と言えば誰にも文句を言われない。

という言い訳を元に
34歳になっても、やたらにケンタッキーを食す土屋氏。
いくつになっても本当に美味しい。
そのチキンの美味しさは
“鶏を無駄にしない”
そんなケンタッキーの企業理念も
加味されているのかも知れません。
(なんだ礼央化ダ・ヴィンチ版参照)

advertisement

そんな僕は
食べ終わったチキンの骨をゴミ箱に捨てた途端に
ある事に気付きゾッとしました。

俺は骨を無駄にしている。
骨を当たり前の様に捨てていました。

「骨を無駄にするかしないかはあなた次第」
そんな声がカーネル人形から聞こえてきます。


「あなたは骨を無駄にしていませんか?」
by カーネル

ここはケンタッキーに敬意を払う為にも
僕は骨まで楽しむ事が出来るユーザーになるべきです。

そこで思いついたのがチキンの骨を鶏ガラと見立てて、
鶏塩ラーメンを作るという活路。
ここまで使えば、鶏もカーネルも許してくれるでしょう。


この骨でスープを取ります

ただ本当に無駄を無くしゴミを全くのゼロにしてしまうと
「ゴミ箱を無駄にしてしまう」
という変なスパイラルに入りそうでしたが
出汁を出し切った骨ならゴミ箱に捨てても良いという
自分なりの結論に達する事で解決。
そしてケンタッキーラーメン(以後KR)を作る前に
「先ずは本物」
という事で
人生初の鶏ガラスープを作り
ガチ自家製ラーメンを作成した前回の連載。
自家製ラーメンも勿論美味しかったのですが、
残念ながら、その直後に食した、
市販のラーメンスープの方が圧倒的に美味しかった。
やはり企業強しです。
結局、自家製ラーメンは
キャンプ地で作ったカレーは美味い理論(以後CCU理論)
だった事を思い知る。
これでは駄目だ。なんとなくもう、
ケンタッキーの骨で鶏ガラの出汁が出る事は想像出来ている。
ケンタッキーラーメンは作っただけでは無く、
美味しくなければならない。
無性に食べたくなるラーメンで無ければならない!
ムキーッ!!
今回はそのレベルにチャレンジだ!

いや、ちょっと待て。
新連載初回からこのエンジンのかかり具合で大丈夫か?

僕の中のプロデューサー脳が訴えかけましたが
プレイヤー土屋礼央氏は完全にその投げかけを無視。
行列の出来るKR作りを断行。


投げかけをムシしてフライドチキンを食べまくる土屋氏。
ムシなのにフライドとはこれ如何に

一度ラーメンスープを作ってみて分かった事があります。
目を閉じスープを噛み締めると
スープの奥に色んな素材を感じる事が出来ました。
(様な気がしました)
鶏ガラスープは鶏ガラの味だけではないのだ。
あんなに生姜の香りを奥の方から感じるとは思いませんでした。
というか、今後ラーメン屋さんに行って
“利きスープ”をやるのが楽しみでしょうがない。
それだけでも収穫ではありましたが、
ここはモノ作りの端くれ土屋礼央
スープの奥に何を感じさせたいか。
前回の鶏ガラスープに何が足りなかったかを考え、
今の僕に考えうる最高の鶏ガラスープを作ろう!

早速鶏ガラを求め、ケンタッキーのお店に向かう。

さて、出汁を取るのに何ピースのチキンが必要だろうか?
というか、何ピース食べられるだろうか?
「食べ終わった骨、譲ってくれませんか?」
パンの耳の様に貰う訳にはいかない。
人が食べた後の骨を貰う勇気は流石に無い。


流石に人の食べた骨のスープはちょっと……

と同時に僕の食べ終わった後の骨から作るスープを
僕以外試食をしたいとは思わない筈だ。
チキンを食べるのを誰かに協力してもらおうと思いましたが断念。
この実験は完全自己完結型を目指します。
鶏ガラスープを作るには
最低でも10ピース分は必要でしょう。
一人では1食3ピースが限界。
一日3食全てチキン。そしてデザートに1ピース。
食事一日、スープ作りに一日。
実験は二日間を予定。

「どんだけ暇なんだ」
「いや違う。仕事だ」
そんな自問自答(以後JMJT)を
繰り返しながらの二日間でありました。

早速、その二日間のレポートをお届け。

ケンタッキーは10ピース以上の注文で
バーレルに入れてくれる事が判明。


バーレルを買うのは勇気がいるぜ

最近は部位が指定出来なくなっていますが、
たしか僕が
ケンタッキーフライドパーフェトチキンを発表した直後くらいに
指定不可になったので
「理由は僕ですか?」
と聞いてみたかったが、
聞く事は出来なかったチキン野郎土屋。

我が家の近くにケンタが無いので
電車の中でバーレルを抱え
車内にケンタ臭を充満させながら帰宅。

さっそく一食目。
早速3ピース。
あぁ美味い。

げふぅ……。

他の仕事。

二食目。
なんとか3ピース。
ムシャムシャ武者……。

GIVE UP!!!


ギヴッ!!ギヴッ!!

このままでは身体の肉が全て鶏肉になってしまう。
ヘタすれば、フライドチキンを嫌いになりかねない。
あとはサラダに混ぜて翌日に食べよう。
という事で残りの4ピースは肉をほぐし、
10ピース分の骨を調達。


10ピース分の骨。これでもキレイに食べたつもりです

出っ張ったお腹と共にさっそく鶏ガラスープ作り開始。

余分な脂を取る為に
既に加熱処理されている骨ではありますが下茹。
そして水洗いをして、余計な部分を取り除く。
スープ作り二回目とあって、手際が良い。


下茹でをした後、余分な部分を水洗い。
もう手慣れたもんです

自分がタモリさん化していく快感を味わう。

今回一緒に出汁を取る食材は
昆布、人参の皮、生姜、ニンニク、長ネギ。

前回入れたタマネギは若干洋風の甘さを感じたので排除。
ここは出汁の昆布様に鶏ガラスープにより深みを加えてもらい
人参の皮で別の景色を入れてみる。


今回は人参も入れてみる事に。連載一本分でもニンジン

ガス点火。


さぁ今度こそ美味しい鶏スープを作るぞ!

前回同様、灰汁取りに没頭。

やはり一度加熱している骨だからだろうか
思ったより灰汁は出ない。

前回よりも弱火をキープ。
なるべく白濁しない様に気を使う。

1時間後……、

おぉ、なんとなく出汁が出ている色になってきた!

間違いなく鶏ガラスープになってきた。
一度試しているからこそわかる、この感覚。
しかも前回よりも、澄んでいる!

これは期待出来そうです。

更に一時間後、仕上げに入る。

性格は顔に出ると言いますが
前回に比べ圧倒的に見た目が良い今回。
明らかに出来が良い。


出来た!

今回は灰汁取りに使った紅茶フィルターで
スープ全体を再度こし万全を期す。


更に紅茶フィルターでこす

そして
フライドチキンの骨で作る鶏ガラスープ完成。


出来た!

フライドチキンで鶏ガラスープが出来るのか?
実験前は少々心配しましたが

まさにトリコシ苦労。

美しいスープを楽しむ為に
何度もスプーンで掬ってはこぼし、完成度を楽しむ。


美味しそうだ!!

味付けは塩のみ。
お好みのマルドンの塩で調味し
適当な具材を乗せ

KR完成


KR完成。わお!

具材はもちろんフライドチキンと鶏の卵。
スープといい具材といい、
まさに鶏界のゆりかごから墓場までラーメン。
彩りは水菜と、ケンタで買ったスイートコーン。

さっそく頂きます……。

美味しい!
なんて美味しいんでしょう。
なんて上品なんでしょう!
鶏なのにウマすぎる!


美味い!UMI!

多少のCCU理論は入っているとは思いますが
前回の自作ラーメンの比では無い!
元々のケンタの味も何処かに潜んでいて、
それが良いスパイスになっています。
昆布と人参も背景としてしっかり味わう事が出来ました!

みんなこのKR、食べてみてっ!
チョー美味しいよ!

と言えないっ!!

俺の食べ終わった骨でとったスープなんて
誰も食べたがらない……。
喜びさえ完全自己完結型。
喜びをトリ分けられない。
美味しく食べた後はひっそりと食器洗い。
ここで実験終了。
美味しく出来たら、ケンタッキーに提案してみようと思いましたが
よく考えたら、それも無理でした。


誰にも言えない!
もう美味いなんて言わないよ絶対!

まぁ良い。

無駄にしないという精神、
そして、美味しさというのは平面的ではなく、
とても立体的である事がとても重要だという事が分かりました。

人間も同じであろう。
同じ事を言っても
その言葉の奥には何が潜んでいるのか?
旨味のある人間はそこが違う。
自分もそうならなくては……。

スープと人間は同じだという事をシル。

新連載もダジャレで締めです。

人ガラが出ますな。

ではでは土屋礼央でした。