映画『アナザー』眼帯ヒロインの橋本愛「実はホラーが苦手」

芸能

2012/8/6

 ダ・ヴィンチ9月号の表紙を飾る、純白の透明感の内側に陰を潜ませる美少女。撮影中も、 彼女がふっとうつむく時、遠い目をする時、現場の空気がひんやりと変化した。彼女は今、何を考えているんだろう? 眼差す誰もが、想像力をくすぐられる。

 女優、橋本愛。熊本県出身、16歳。湊かなえのベストセラー小説を原作にした、映画『告白』の演技で一躍注目を集めた。当時を振り返って、彼女は言う。
「演技をすることが初めてに等しい作品で、あそこまで監督に愛されて、鍛えられて。本当に運が良かったです」

 高校進学のタイミングで、友達のいる故郷を離れ、東京へ。仕事は倍増し、環境の変化に戸惑う時期もあった。だが、ある時、心に決めたそうだ。
「お仕事を頑張ろうっていうか、もっと好きになろうとしました。やりたくないことをやらされているとか思っちゃうのはイヤだったし、お仕事への思いが強い人たちと一緒に仕事をしているのに、そんな自分じゃ申し訳ないな、情けないなって思えてきて……。好きにならなきゃ、わりに合わないなって(笑)」

 気持ちを変化させる前後に撮影されたのが、現在公開中の映画『アナザー Another』だ。そのクラスでは誰かがすでに、死んでいる。死者は、誰だ――? 綾辻行人の学園ホラー長編小説を、脚本も手掛けた新鋭・古澤健監督が、見事に実写化した。
「できあがった映画を観て一番最初に思ったのが、古澤監督のチャレンジ精神なんです。いろんなことに挑戦してるなあって現場でも思っていたし、今まで見たことのない不思議な画がたくさん見れました」

 演じたのは、左目に眼帯をしたヒロイン・見崎鳴。中学3年のそのクラスでは、メイは「いないもの」とされている。とある「現象」によって引き起こされる死の呪いを回避するため、生け贄の役を担っていたのだ。台詞は少ないかわりに、身体で存在感を表現しなければいけない。難役だ。事前に原作を読み、役作りのヒントにしたという。
「原作を読んで感じたメイちゃんのイメージを意識して、特に前半は、ただそこに幽霊っぽく存在しようって考えていました。そんなメイちゃんが、転校生の恒一と出会って、心に閉じ込めていたものが見破られて、理解されて。その嬉しさっていうのは、私自身演じながら自然に出てきました。終盤の、メイちゃんが思いきり感情を出すシーンは、一番のお気に入りです」

 ここで、意外な発言が。ホラー映画は苦手なのだそう。
「誰かと一緒じゃないと観れないです(笑)。ただ、『アナザー Another』の場合は、脚本を読んでいた時も、現場でも、私自身はホラーだっていう意識がまったくなくて。すごくストーリーが面白いなと思ったんですよ。謎のピースが多くて、それが全部ハマって完成した時のすっきりした感じは、今まで私が見てきたどんなミステリーの作品よりも強いです。青春の話としても面白いし、新しいホラー映画になっていると思いますね」

 いい作品に参加できた喜びが積もることで、迷いも吹っ切れた。「好きになろうと思った」の「好き」が、本物になったのだ。
「演じることが本当に好きになっているなって、自分でも感じています。こんな役をやってみたいというよりも、今はいいものを作りたいという気持ちが一番。もっと多くの作品に関わっていきたいし、もらった沢山の愛を、お芝居で返していきたいんです」

取材・文=吉田大助
(ダ・ヴィンチ9月号「スタジオインタビュー」より)