今、最もせつなくて泣けると話題のBLマンガ『500年の営み』

BL

更新日:2012/8/13

「こんなBLはじめて」「途中から涙が止まらなかった」……これは、山中ヒコの『500年の営み』(祥伝社)に寄せられた読者の感想の一部である。この作品が、「今、いちばん泣ける!」と話題を集めているのだ。
『500年の営み』は、設定からして実に切ない。ポイントは“アンドロイドの恋”を描いている点にあるだろう。

advertisement

 恋人の太田光を亡くし、その後を追って自殺したはずだった主人公の山田寅雄。しかし、両親の希望で冷凍保存され、250年後の未来で目覚めたとき、傍らにいたのは光に似せて作られたアンドロイドのヒカル=B=JW2260MCHINAだった。もともとは、ロミオとジュリエットのように、家同士が仲が悪く、仲を引き裂かれてしまった2人。250年の時を経て、今度こそ結ばれるかと思われるが……という物語だ。

 いくら恋人だった光に似せて作られていても、ヒカルBは光じゃない。しかも、そっくり度は“3割減”という中途半端なアンドロイド。器用でなんでもできた光と違い、ヒカルBはりんごの皮もうまく剥けないし、道にも迷うし、コップだってしょっちゅう割ってしまうでき損ないなのだ。寅雄も、最初はそんなヒカルBに見向きもせず、「あんまり似てなくてごめんね」と謝られたり、無条件に尽くされても、恋人として作られているのだから当たり前だと思っているのか、気にもかけない。

 しかし、突然ヒカルBが消え、代わりに100%光そっくりのヒカルAが現れたとき、寅雄は気づくのだ。一緒に時間を積み重ねるうち、光そっくりなヒカルAでもない、本物の光でもない、不器用で優しいヒカルBに惹かれていたことに……。

 本当なら、いくらでも代わりが利くはずのアンドロイド。それなのに、寅雄にとってヒカルBはいつの間にかかげがえのない唯一無二の存在になっていた。それは人間同士の恋でも同じこと。誰も誰かの代わりになんてなれない――そんな恋愛の唯一性を丹念に掬い上げ、ひとつひとつをじっくりと描き出しているのだ。BLであり、アンドロイドものではあるが、ここにあるのは普遍的な愛のかたち。多くの人が感涙してしまう理由は、そこにある。

 好きだと気づくたび、思いが通じ合ったと思うたびに訪れる、寅雄への試練。再び大好きな人と引き裂かれた寅雄は、今度こそ無事にヒカルBと再会することができるのか? 2人の恋の行方は、ぜひ自分の目で見届けてほしい。