幻の名作・小野不由美『悪夢の棲む家』がコミック化で復活!

マンガ・アニメ

2012/8/12

 長らく幻の作品となっていた、小野不由美の小説「ゴーストハント」シリーズ(旧「悪霊」シリーズ)。2009年にコミック版が完結し、10年から始まった復刊も昨年には全巻が出揃うなど、ようやく誰もが気軽に手に取れるようになった。

 そしてこのたび、ファン待望の続編『悪夢の棲む家』のコミック版も、コミック誌『ARIA』で連載開始。ダ・ヴィンチ9月号では、マンガ家・いなだ詩穂のインタビューとともに、掲載されたばかりの第1話ネームを特別公開している。

 そもそもいなださんは、コミック化を手がける以前から同シリーズの大ファンだったという。『悪夢の棲む家』も、数え切れないぐらい何度も読み返したそうだ。
「先日、とうとう製本の糊がバリッと割れてしまったぐらいなんです(笑)。最初に読んだ当時は、この作品に登場する家族と似たような怖い家が近所にあったので、同じことが起きたらどうしよう! と、半ば本気で怯えていました」

 同じこと、とはこの不穏な作品で起こる、身の毛もよだつ事件のことである。

 ある日、渋谷サイキックリサーチ(SPR)に若い女性がやってきた。来訪の目的は調査依頼。自宅で起きる怪奇現象の謎を調べてくれというのだ。

 窓という窓になぜかガラスの代わりに鏡が入っているという奇妙な造りの彼女の家では、原因不明の電化製品の故障が相次いでいたほか、怪現象や怪音が時を選ばず発生していた。さらに、不気味な隣人の存在。これらがないまぜになって、母娘二人の生活を脅かしていたのだ。

 さっそく依頼者の家に向かうSPRの面々。だが、そこには過去のどんな事件をも上回る恐怖と戦慄が待ち受けていた……。

「この作品は、いわゆる密室ものに近いのかな、という印象なので、うまく“息苦しさ”みたいなものが表現できればいいんですが。 原作の持つじわっと染みてくるような怖さを損なわず、うまく換骨奪胎しながら、マンガとしておもしろくできればいいなと思っています。意気込みだけはいつも、いっちょまえなんですけど……」

 一昨年から昨年にかけて復刊された「ゴーストハント」シリーズだが、実は『悪夢の棲む家』だけはまだ。それというのも、『悪夢の棲む家』は、続編ではあるものの、一旦は完結した旧「悪霊」シリーズとは別のシリーズとして、新たなレーベル、体裁で発表された作品だったからだ。
「今までは麻衣の一人称で物語が進んでいましたが、本作は三人称で書かれています。つまり、これまでは麻衣が遭遇していないエピソードは描けなかったけれど、今回はどの人物の視点からでも描ける。この点が一番の違いです。特定の人物からの印象だけではなく、俯瞰して物語を追える、という感じでしょうか」

 本格ホラーとして書かれたがゆえに、目を覆いたくなるような凄惨なシーンも出てくる。
「心情的にはつらい部分もあるんですけど、幸いというか、私はそういったシーンを描くのがあまり苦にはならないので、その点は助かっています。とはいえ、雑誌の担当者からは『絵的にやりすぎ注意ですよ』と先手を打たれておりますです」

 なにぶん、少女コミック誌での連載だ。どこまであの鬼気迫るシーンが再現されるのか、興味の尽きないところではある。
「小野さんとは、舞台を現在にあわせましょう、というお話はしました。あとは家の間取りを適当に変える許可をいただきました。メイン舞台の家の間取りを原作どおりに描こうとすると、異空間が発生してしまうので(笑)。また、原作ではレギュラー陣が出揃うのは後半になってから。やはりレギュラーメンバーは全員登場させないといけないと思うので、調整は追い追い頑張ります!」

取材・文=門賀美央子
ダ・ヴィンチ9月号特集「全作ハズレなし! 小野不由美を読む」より)