メダルラッシュの影に潜む 韓国“超”競争社会の実態

更新日:2012/8/20

 今回のロンドン五輪で金メダルを13個獲得した韓国。総メダル数も28個で、総合5位というソウル五輪につぐ好成績をおさめた。スポーツだけにとどまらず、テレビドラマ、映画などのコンテンツ分野がアジア圏を中心に人気を博し、K-POPはヨーロッパにも進出。LGエレクトロニクスやサムソンといった家電メーカーの成長も著しい韓国。このような破竹の勢いは、「グローバルエリートの育成」を掲げた政策や、長い下積みを経てもなお熾烈な争いが待っている芸能界システムなど、あらゆる場面で行われる“競争”が支えているのだ。

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 しかし、競争社会の裏側には、当然ながら厳しい一面もある。「二位になるとおめでとうと言ってくれる人がいない」――このキム・ヨナの発言からも伝わるように、求められるハードルは並みの高さではない。そんな韓国社会の実態を明かした本が、『オーディション社会 韓国』(佐藤 大介/新潮社)だ。本書は、異例の高視聴率を誇るオーディション番組を手掛かりにして、韓国の超競争社会を紹介している。

 韓国といえば、学歴重視の社会であることはよく知られているが、それに伴い、受験競争も激しい。この本によれば、家計の5割が塾の費用に消えるということも珍しくないらしい。そうなると、所得が高い富裕層ほど教育にお金をつぎ込めるため、経済格差がそのまま教育格差へとつながっていく。日本でも所得格差が教育格差を生んでいることが指摘されているが、教育熱の高さは日本をはるかに凌ぎ、そのぶん歪みも大きい。「子どもの教育に多くの費用がかかる」ことを理由に、出生率はどんどん低下。2009年の出生率は、日本の1.37よりも低い1.15という数字となっている。

 “良い大学”に入ったとしても、競争は終わらない。“良い就職”のためには資格取得はもちろん、外見も重要になってくる。企業の人事担当者へのアンケートでも、67パーセントが「容姿が採用に関係する」と回答。また、恋愛においても、安定志向の強さから、高スペックの男性を手に入れるためには整形手術も辞さない。しかも、これは女性に限った話ではない。美容整形を受ける患者の3人に1人は男性であるといわれるほど、男性も“容姿スペック”が重視されるのだ。

 このほか、広がる非正規雇用の問題や自殺率の高さなど、本書は韓国社会のエリート主義の弊害をさまざまな角度から取り上げている。しかし、この本を読んで気付かされるのは、いずれも日本が抱える問題と重なることだ。韓国では、非正規雇用者となった若者たちを、その平均月収から「八八万ウォン世代」と呼ぶそうだが、これは日本におけるロストジェネレーション世代の姿と重なる。さらに、恋愛・結婚・出産を放棄する「三放」が社会現象化しているというのも、“リア充”という概念が一般化する日本にも当てはまるキーワードではないだろうか。

 もちろん、表出する歪みのかたちは違う。しかし、“生きづらい社会”という意味では、韓国も日本も同じ問題を抱えた似た国……そのことがよくわかる1冊だ。