甲子園マンガも女子高生が主人公の時代!?

マンガ

公開日:2012/8/18

 今年もこの季節がやってきた。毎年夏になると熱い戦いが繰り広げられる甲子園。1敗も許されないからこそ、この1試合、その1球に高校生活のすべてが込められ、毎日のようにドラマが生まれる。この熱いドラマはマンガの世界にも多大な影響を与え、古くは『巨人の星』(川崎のぼる、 梶原一騎/講談社)『ドカベン』(水島新司/秋田書店)から、『プレイボール』(ちばあきお/集英社)『タッチ』(あだち充/小学館)、最近の『おおきく振りかぶって』(ひぐちアサ/講談社)まで、数多くの傑作甲子園マンガが生み出されてきた。

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 しかも、このジャンルが興味深いのは、時代とともに進化をとげ、新しいムーブメントを作り出していることだ。
たとえば1970年代までは、スーパースターを主人公にしてライバルとの激闘を描く作品が主流だった。ところが、1980年代、『タッチ』が大人気になると、それを機にラブコメテイストの甲子園マンガが花盛りになり、その後は『県立海空高校野球部員山下たろーくん』(こせきこうじ/集英社)『名門! 第三野球部』(むつ利之/講談社)といった、背が小さく鈍くさい少年が活躍するコンプレックス克服ものが登場。90年代から2000年代にかけては、『クロカン』(三田紀房/日本文芸社)『ラストイニング』(神尾 龍、中原 裕/小学館)といった監督の采配にスポットをあてた作品が生み出され、『ROOKIES』(森田まさのり/集英社) 『Wild baseballers』(関口太郎、藤沢とおる/講談社)のような不良少年たちが甲子園を目指す熱血アウトローものが人気を博した。

 さらに数年前からは、チームメイト同士のつながりや友情をテーマにした野球マンガがブームになっている。代表作はもちろん『おおきく振りかぶって』。気が弱くコミュ障気味なピッチャー志望の少年と、自信過剰で仕切りたがりのキャッチャー役の少年がお互いの欠点を克服しながら信頼関係を築いていくストーリーは、男性だけでなく腐女子からも熱烈な支持を得て、野球マンガの新しい読者層開拓に大きな役割を果たした。

 そして2012年夏。さらなる新しい波をもたらしてくれそうな作品が登場した。その作品とは、7月10日にコミックスが発売されたばかりの『ボール・ミーツ・ガール』(たまきちひろ、綱本将也/集英社)。天才的な打撃センスをもつ女子高生・初芽が、女監督・彩葉と一緒に甲子園を目指すという、文字通り少女が主人公の野球マンガだ。

 『タッチ』の南ちゃんや『最強! 都立あおい坂高校野球部』(田中モトユキ/小学館)の菅原鈴緒、『おおきく振りかぶって』のモモカンなど、これまでの甲子園マンガにも魅力的な女性キャラはたくさんいたが、彼女たちはあくまで主役を引き立てるわき役にすぎなかった。それが『ボール・ミーツ・ガール』では、美少女がメインプレーヤーとして試合に参戦しているのだ。しかも、原作が『GIANT KILLING』(ツジトモ、綱本将也/講談社)の綱本将也というだけあって、女子は甲子園に出場できないという現行ルールをひっくり返す“秘策”の存在など、読者をわくわくさせてくれる仕掛けも沢山用意されている。

 コミックス第1巻の段階ではまだ断定できないが、「燃え」と「萌え」の2つの要素をもった『ボール・ミーツ・ガール』がこれまで野球マンガと無縁だったおたく系読者を取り込んで、人気マンガとなる可能性は十分あるだろう。そうなれば、女子高生を主役にした甲子園マンガが次々と生まれ、新たなジャンルが誕生するような事態になるかもしれない。

 はたして「美少女野球マンガ」の時代はくるのか? 今後の展開に注目したい。