“たった1つの〇〇”本に書いてあることは本当に1つだけ?

暮らし

2012/8/29

 最近、書店に行くと驚くのが、タイトルに「たった1つの」という言葉が入った本がやたら多いこと。とくにビジネス書や自己啓発本のコーナーは大流行中で、今年、出版された本だけでも、『死ぬことが怖くなくなる たったひとつの方法』(矢作直樹、坂本政道/徳間書店)、『起業家10000人から見た「結果を残す人」のたった1つの行動習慣』(立石 剛/フォレスト出版)、『こんな時代に会社を伸ばすたった一つの法則』(小宮一慶/海竜社)、『後悔しない人生を送るたった1つの方法』(井上裕之/中経出版)、『あなたを変えるたった1つの「小さなコツ」』(野澤卓央/祥伝社)、『「希望を信じる力」をつくるたった1つの習慣』(植西 聰/青春出版社)……と、このほか挙げだすとキリがないほどの点数だ。

 “たった1つ”本が増えはじめたのは、今年に入ってから。その理由には、昨年発売された『「折れない心」をつくるたった1つの習慣』(植西 聰/青春出版社)がベストセラーになったことが考えられる。本のセールスには必須条件であるタイトルのキャッチ―さもさることながら、「1つでいいなら自分にもできるかも!」というお手軽感が読者にウケているのかもしれない。

 しかし、気になるのは、「“たった1つの〇〇”と書いてあるけれど、本当に必要な方法や習慣は1つだけなのか?」ということだ。

 たとえば、『あなたを変えるたった1つの「小さなコツ」』の場合。ふむふむと読み進めると「自分を変える6つのステップ」についての解説が。えっ、1つじゃなくて6つなの……? 続いてこちらも今年出版された『スイートルームに泊まる人のたった1つの習慣』(池田里香子/あさ出版)はどうだろう。「自分がトラブルに巻き込まれたときほど相手を思いやる」「寄り添うように、慈しむように、深い愛情を子供に注ぐ」「時間がない!」「忙しい!」は、決して口にしない」……こちらも習慣は1つではなさそう。

 どの本にあたっても、答えは複数のものばかり。そんななか、『こんな時代に会社を伸ばすたった一つの法則』に希望の一節が!
「伸びる会社になるために大切にすべきことは、一つだけです。それは、「良い仕事」をするということです」

 ええっ、そんなこと言われたって「良い仕事」ってどんなことなの!? ……と思わずツッコミたくなるが、きちんとその「良い仕事」について解説が事細かに書かれていた。“たった1つ”とタイトルに入った本は、いずれも1つの方法や習慣を試せばいいものではないが、だからこそ、どんな人にも当てはまったり実践できるものが見つかる構成になっているのだ。

 さらに“たった1つ”本は進化しているようで、最近では『人生を好転させるたった2つのこと 「自分には何もない」と思った時に読む本』(吉江 勝/角川学芸出版)というような“たった2つ”本も登場。変化球では、『たった1%変えるだけであなたの人生に奇跡は起きる』(トム・コネラン、本田 健/日本文芸社)や『99%の人がしていない たった1%の仕事のコツ』(河野英太郎/ディスカヴァー・トゥエンティワン)といった“1%”本も人気を集めている。

 こうして考えてみると、「1つしか書いてないほうがラクなのに」なんて思ってしまうズボラ思想を捨てることが、どんな道でも大切だということなのかもしれない。