『初版グリム童話』より怖い『憂鬱なヴィランズ』のエグすぎる中身

文芸・カルチャー

2012/8/31

以前紹介した『大人もぞっとする初版『グリム童話』―ずっと隠されてきた残酷、性愛、狂気、戦慄の世界』(由良弥生/三笠書房)。みんなが慣れ親しんだ童話とは違い、残虐なストーリーや描写で人々を震え上がらせたが、そんな初版『グリム童話』よりもずっと怖い作品があった!?

8月21日に発売されたライトノベル『憂鬱なヴィランズ』(カミツキレイニー、キムラダイスケ/小学館)は、架空の童話絵本『ワーストエンド・シリーズ』をめぐる物語。この絵本には『赤ずきん』や『青髭』、『白雪姫』など、誰もが知っている童話が載っている。ただし、結末はすべて救いのない憂鬱なものばかり。

たとえば『赤ずきん』のオオカミはおばあさんを解体して肉とワインにしてしまい、赤ずきんに振る舞う。そして、その後服を全部脱ぐように要求し、ベットへ誘った赤ずきんをもてあそび、なぶり、食べる。この絵本では猟師なんて助けにこないのだ。そして、本来なら屋敷を訪れた兄たちに助けられるというストーリーの『青髭』も、この絵本では間に合わず、拷問部屋に連れていかれた娘は最期の時まで「神さま、神さま」と祈りながらなぶり殺されるという、残酷な結末に。

さらに、悪役=ヴィランズが活躍する『ワーストエンド・シリーズ』には、『DEATH NOTE』も真っ青の恐るべき秘密があった。この絵本に魅せられた読み手は、『赤ずきん』の嘘つきオオカミ、『青髭』の殺人男爵、『白雪姫』のいじわる王妃などから能力を借りることができる。そして、本の貸出期限を過ぎてしまうと、身体ごとヴィランズに乗っ取られてしまうのだ……。

物語の主人公の高校生・笠木兼亮の親友である煮雪瞑は『赤ずきん』の噓つきオオカミに体を乗っ取られてしまう。“少女嗜好”という欲求を抑えきれなくなり女子中学生を誘拐しだす親友の瞑を救うため、兼亮は『ワーストエンド・シリーズ』を回収しているという蒼い瞳の少女・帯刀月夜とともに絵本のありかを探るのだが……?

作者のカミツキレイニーは『オズの魔法使い』をモチーフにした『こうして彼は屋上を燃やすことにした』(カミツキレイニー、文倉 十/小学館)で第5回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞を受賞してデビュー。ラノベ好き書店員大賞でも9位にランクインするなど、今注目の作家だ。そんな彼が織り成す童話は一体どこまで残虐なものなのだろうか。憂鬱な結末しか用意されていない絵本『ワーストエンド・シリーズ』は全部で16冊。残りの本にはどんな救われないお話が綴られているのか? もしかしたらあなたも、ヴィランズに魅せられてしまうかもしれない。