初版100万部はあたりまえ? 中国で大注目される村上春樹作品

更新日:2012/9/14

 日本国内での人気はもちろん、世界中で作品が翻訳され、熱烈な支持を得ている作家・村上春樹。それは隣国・中国も例外ではないという。『ダ・ヴィンチ』10月号の村上春樹特集で、“中国で最も有名な日本人”というキャッチフレーズで活躍する国際コラムニスト・加藤嘉一氏がその人気の実情について語った。

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 「中国のインテリや作家で「村上春樹」の名を知らない人はまずいないでしょう。書店に行けば大抵「村上春樹」の棚がありますし、『1Q84』も発売前から非常に関心が高かった。中国でも同書の版権を勝ち取るべく、相当熱烈なオークションになったようです。初版100万部なんていうレベルで、予想以上に売れたそうです。中国では東野圭吾さんや渡辺淳一さんもよく読まれていますが、村上さんの場合は作品そのものだけでなくライフスタイルや生き方まで注目されていて、他の作家とは次元が違うところにいるように感じます。『考える人』に掲載された村上さんのロングインタビューが翻訳出版されて広く読まれている程です。作家のフォロワーもいて、例えばペンネームがその名も“春樹” という1983年生まれの若い女性作家がいます。エルサレム賞を受賞したときの「壁と卵」のスピーチも大きな注目を集め、僕の周りには「中国共産党と中国人民の関係に当てはまる」なんて言っている人もいました。
 
 作品だけでなく、村上春樹という“人間”に関心が集まるのは、中国人が人と違う個性や生き方を尊敬する土壌があるからでしょう」
 
取材・文=橋富政彦
(ダ・ヴィンチ10月号「いまこそ、村上春樹」特集より)